フィギュアスケートは競技会やアイスショーで、一年を通して楽しめるスポーツです。
スケーターの容姿、演技、衣装、音楽、見どころがたくさんありますね。
あなたはいつも、何に注目して観ていますか?
私は衣装に注目しています。
氷上のバレエとも言われるフィギュアスケートは、高度な技と美しさが同時に要求される競技です。
技術を追求するだけでなく、表現力を磨く訓練も必要です。
オリンピック2大会連続で表彰台に上がった男子フィギュアスケートの宇野昌磨選手は、とても練習量が多いことで有名です。
小学生の頃から大人になった現在までずっと、数多くの輝かしい記録を出し続け、国内外の観客を魅了してきました。
スポーツであり総合芸術でもあるフィギュアスケートでは、選手の個性・音楽・振付に融合した衣装が、とても重要な役割を果たしています。
この記事では、身体の一部となってプログラムを演出する「衣装」に注目しながら、宇野選手の近年の歩みをたどります。
ぜひ、最後までお読みくださいね!
● 宇野昌磨選手が歩んできた道と衣装の変遷
● 衣装を決めるのは誰?
● フィギュアスケートの衣装はどんなことに配慮して作られるの?
● デザイナーはどんな人?
宇野昌磨選手の衣装の変遷とオリンピック
衣装のデザインは選手自身がイメージを決めることが多く、一人のデザイナーに依頼する場合と数名で競うことがあるそうです。
中にはデザインまで自分でする選手もいます。
2018年の平昌大会で宇野選手の衣装をデザインしたのは、羽生結弦さんをはじめフィギュアスケーターの衣装を数多く手がける人気デザイナー伊藤聡美さんでした。
2018年 平昌オリンピックで「銀メダル」を獲得したときの衣装
フリースタイルの衣装は、オペラ曲「トゥーランドット」の登場人物をイメージしてデザインされました。
深い青の地にゴールドの装飾が輝く、壮大な楽曲と演技にふさわしい衣装です。
伊藤さんがイタリアのローマを旅行した時に、青の柱にゴールドの装飾がある教会を見て、とても印象に残ったそうです。
帰国後まもなく宇野昌磨選手から「トゥーランドット」の音楽に合わせた衣装の依頼があり、瞬間的にこの配色を決めました。
ショートプログラムでは、大地をおおう氷の結晶を思わせるグレーの衣装をまとい、ヴィヴァルディの「四季」より「冬」を伸びやかに演じています。
彼は初めてのオリンピックで、総合2位となり銀メダルを獲得しました。
デザイナーの伊藤さんは、まず楽曲から受けたインスピレーションでデザインを提案します。
その後、選手側からの要望をもとに修正しながら衣装を製作していくそうです。
完成してからもサイズや装飾などの修正は何回も行われ、「氷の色と同化して動きがよく見えない」という審判員からの指摘で色を染め直すこともあるといいます。
競技の規定には、衣装の重さやデザインの制限などが細かく決められていますが、製作する上では他にも大事な要素があります。
● 演技の動きを妨げないこと
● プログラムに沿ったイメージであること
● 選手の体型や個性を尊重しながら美しいデザインを追求すること
実は「トゥーランドット」の衣装には、驚きのエピソードがありました。
宇野選手は動きにくかったのか、自分で衣装の襟にハサミで切れ込みを入れたそうです。
遠征先だったという事情があったにせよ、珍しいケースです。
びっくりですね!
この件に関して伊藤さんは、「選手の動きに配慮が足りず申し訳なかった」という内容のコメントをしています。
常に選手ファーストで仕事をする、伊藤さんのプロ意識が感じられますね。
中京大学スポーツミュージアムに、宇野選手の平昌オリンピックの時の衣装3着が展示されています。
古巣からの旅立ち
長い間ずっと頂点を争う戦いに臨んできた宇野選手に、平昌オリンピックの後で大きな試練が訪れます。
2019年3月の世界選手権で3年ぶりにメダルを逃し、同6月には幼少期からずっと一緒だった二人のコーチから離れることになりました。
「金メダルを目指すために環境を変えた方がよい」と、山田満知子コーチから所属クラブの退会を勧められたそうです。
初めは抵抗していた宇野選手も最終的には受け入れて、クラブを離れました。
その後は他のコーチとの専属契約もまとまらず、一人で世界大会に臨みます。
コーチ不在のグランプリシリーズ・フランス杯は8位で惨敗、会場でひとり涙にくれる姿がありました。
そんな宇野選手を救ったのは、コーチとしてはまだ無名だったスイス人のステファン・ランビエールさんでした。
宇野選手は彼から今までとは違う競技との向き合い方を学び、スケートの楽しさを取り戻しました。
この頃から新たに、カナダ人デザイナーのマシュー・キャロンさんが宇野選手の衣装を手がけています。
彼はバレエやアイスダンスの衣装を、数多く製作してきました。
2022年には、6カ国22人のフィギュア選手の衣装を担当しています。
2022年 北京オリンピックで「銅メダル」を獲得したときの衣装
宇野選手はフリースタイルで苦戦したものの、総合3位で2大会連続のメダルを手にしました。
フリースタイルの「ボレロ」は「4種類の4回転ジャンプ5本」を含む、難易度が非常に高いプログラムです。
しかも「最初から最後まで動き続ける振付」には、異常なほどの体力を要すると宇野選手自身が語っています。
宇野昌磨選手の北京オリンピックの衣装を作成したキャロンさんは、演技全体のイメージだけではなく、選手の体格や滑るときのフォームを細かく分析し、装飾の分量や配置を計算しています。
フリープログラム「ボレロ」の衣装では、闘牛士を思わせる小さめのボレロがアクセントの衣装でした。
黒地に金の刺繍が身体に沿って縦に並ぶデザインは、小柄な宇野選手を大きく見せるための工夫です。
ショートプログラム「オーボエ協奏曲」は、肩から流れる斜めのドレープが美しい衣装で演じました。
しなやかな身体の動きに寄り添いキラキラ輝くスパンコールは、満天の星のようです。
米国の著名なデザイナーであるニック・ベレオスさんは、この衣装を「男子のベストコスチューム」と大絶賛しています。
宇野昌磨選手の北京オリンピック後世界選手権の衣装と渾身のボレロ
毎年開催される「世界フィギュアスケート選手権大会」は、オリンピック以上と称されるほど権威のある世界大会です。
2022年3月のフランス大会で、宇野選手は遂に金メダルを獲得しました!
北京オリンピックで不本意な結果だった「ボレロ」を驚異的にレベルアップさせ、ショートプログラム「オーボエ協奏曲」でも完璧な演技を見せた結果の受賞です。
2022年世界選手権で「優勝」した時の衣装
宇野選手は衣装をたくさん作ることでも有名なのですが、この大会では北京オリンピックとは色違いの衣装を身につけました。
フリースタイルの「ボレロ」では青の衣装を着ましたが、宇野選手を一段と大きく見せるボレロの大きさと、多めの装飾の分量が目を引くデザインになっています。
動画でご紹介しているショートプログラムの赤の衣装は、グレーのものとは首回りのデザインが少し異なっています。
彼自身は「グレーの評判がとても良かったけれど、せっかく作ったのでいつかは赤も着ようと思っていた」とコメントしています。
一方コアなファンは「グレーよりも赤の方が首回りが楽なデザインなので、伸び伸びと演技ができるからではないか」という見方をしているんですね。
この大会では絶対に勝ちたい!という宇野選手の思いが衣装の選定から感じられました。
自己最高の演技ができて本当によかったです!
自分を再生させてくれたランビエールコーチへの恩返しを胸に、厳しいトレーニングを続けてきた宇野選手。
一段とスリムに引き締まった身体が、その日々を物語っています。
番外編 想い出の衣装
これは、お母様が手作りしていらした宇野選手の衣装の映像です。
今はプロのデザイナーが手がけている宇野選手の衣装ですが、幼い頃から長い間お母様が手作りしていらしたのですね。
身体が弱かった我が子のために習わせたスケートが、五輪メダリストの出発点でした。
お母様は今もコーチや関係者と共に、彼のサポートを続けていらっしゃいます。
宇野昌磨選手|衣装の変遷に見る2回のオリンピック
男子フィギュアスケート宇野昌磨選手の衣装の変遷と、これまでの歩みをご紹介しました。
👍 コーチ、選手本人、家族などが、デザイナーを選定して衣装を決める
👍 フィギュアスケートでは、厳しい競技規定のもとに衣装のデザインが制限される
👍 音楽や演技の内容に沿ったイメージを基にして、衣装は作られている
👍 デザイナーは選手の体型やフォームの特徴を基に、より美しく見える衣装を作っている
👍 2回のオリンピックでは、それぞれ別のデザイナーが衣装を担当していた
フィギュアスケートの美しい衣装には、多くの人々の思いが込められているのですね
これからは演技を見守るあなたの目に、いっそう光り輝いて映るのではないでしょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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