「赤ちゃんの体重がなかなか増えない……」
「母乳はいくらでもあげていいと言われたのであげていたら、いつまでたっても授乳の間隔があかない……」
「離乳食を全然食べなくてつらい……」
「育児書なんて全然参考にならない!」
赤ちゃんが産まれた感動もつかの間、食に関する悩みは尽きませんよね。
しかも子どもの食事のことって、調べようにも聞く人やサイトによって言っていることが全然違うと思いませんか?
専門家のアドバイスは、言っていることはわかるけど実現が難しいことも多々……。
なぜ食事に関する情報が混乱しがちなのかというと、誰でも発信できるうえに、病気と違って特効薬がないからなんです。
特に離乳食は食べること食べない子の差が激しく、食べない子の親は本当につらいですよね。
しかも「食べない子にはこうするといい」という対応に、当然ながら決まりなんてありません。
- 子どもと親、それぞれがもともともつ気質
- 子どもと親、それぞれの精神状態
- 子どもを取り巻く環境
- 親の生活スキルや仕事の状況
など、本当に様々な要素が関係しています。
個人の「うちの子はこうだったよ!」はもちろん自分には当てはまらないし、育児書の「こうしましょう」にかえって苦しくなることもあります。
だからといって「離乳食は個人差があるからぼちぼちやりましょう」と言われても、全然悩みは解決しませんよね。
そこでこの記事では、保育士の卵たちに「子どもの食と栄養」を教えてきた医学博士・管理栄養士&(ペーパー)保育士のももが、原点に立ち返って赤ちゃんの心とお口の発達に目線をおいた離乳食の役割をご紹介します。
「こうするといいよ」という小手先のテクニックではなく、「離乳食を食べさせる上で、親にもっていてほしいマインド」についてお話します。
これを知っておくと、赤ちゃんの(親から見ると)困った行動も、これのことかー!と思えて、少しだけ気が楽になるはず!
育児の原点なので、悩んだときにここに戻ってこられれば、余計な情報に振り回されなくて済んじゃいますよ。
離乳食はつらい?まずは、役割を知ろう!
教科書的には、離乳食には下記のような役割があります。
- エネルギー・栄養の摂取
- 食べる機能が発達する
- 消化機能が発達する
- 精神が発達する
- 生活リズムを整える
しかし今回お話するのは、離乳食を与える上で親にもっていてほしいマインドです。
お伝えしたいのは2つです。
- 「食べる」という行為には練習が必要
- 離乳食は、味との出会い
ひとつずつ見ていきましょう。
「食べる」という行為には練習が必要
赤ちゃんは、産まれたその瞬間から母乳を飲むことが出来ます。
だから当然、時期がくればご飯も食べられるでしょ~というのは、半分正解・半分不正解です。
なぜなら、産まれたばかりの赤ちゃんが母乳を飲めるのは、実は本人の意思ではなく反射なんです。
生物学で言う反射とは、動物の生理作用のうち、特定の刺激に対する反応として意識される事なく起こるものを指す。
引用:Wikipedia
熱いヤカンを触ったときに思わず手を引っ込めるアレと同じです。
授乳は生命に直結することですから、動作の一つ一つが本能に組み込まれているんですね。
もうそれだけで、赤ちゃんてすごいと思いませんか。
ちなみに、大体生後3カ月頃になると少しずつ赤ちゃんの意思での授乳に変わってきます。
出産後「泣いたらすぐ授乳」と指導されますが、3カ月頃からは少しずつ授乳にもリズムをつけて食事の時間に合わせてあげると、離乳食への移行がしやすくなりますよ。
ではここでクイズです。
赤ちゃんが美味しそうに乳汁を飲んでいる姿を思い浮かべてください。
ごっくんするときの口は、開いていますか?閉じていますか?
5。。。
4。。。
3。。。
2。。。
1。。。
わかりましたか?
そう、開いているんです!
さあ大人の皆さん、あーんとしっかり口を開けたまま「ごっくん」と唾を呑み込んでください。
なかなかできませんよね。
この赤ちゃんのこのごっくんは「乳児型嚥下(にゅうじがたえんげ)」と言って、私たちが口を閉じてする「成人型嚥下」とは全く違うので、マスターするには練習が必要なのです。
つまり、
- 自分の意思によって食べるようになる
- 「ごっくん」の仕方が授乳と食事では違う
からこそ、「食べる」には練習が必要なんです!
そして、いきなりそれを栄養補給を目的とした普通の食事でやるのは難しいので、「練習期間としての離乳食」があるんです。
だから、離乳食は食べなくても大丈夫、なんです。
「食べさせなくていい」ではなくて、「食べる練習なので、うまくいかなくても全然気にしないで」の「大丈夫」です!!
もうひとつ例を挙げますね。
みなさん、ごはんを口に運ぶ時、どのタイミングで口を開けますか?
これもぱっと聞かれるとわかりませんよね。
聞かれるとわからないくらいスムーズに食事ができているのは、長年の練習と実践の賜物なんです!
なぜなら、「食べる」という動作は実はかなり高度な動きなんです。
- 目で食べ物を認識する
- 食具を持つ(または手)
- 肩や肘、手首などの関節を適切に曲げて、お皿へ腕を運ぶ。
- ちょうどいい力加減で食べ物をとる。
- 肩や肘、手首などの関節を適切に曲げて、口元へ運ぶ
- ちょうどいいタイミングで口を開ける
- 口の中に食べ物を取り込む
- 口の中の適切な場所を使って、噛む
- 呑み込む
ぱっと書き出すだけでも、こんなにたくさんの動きが組み合わさって、やっと食べ物を食べられます。
そしてこの一連の動きは、経験を積んで少しずつ少しずつ「ちょうどいい」がわかるから上手になるんです。
だから赤ちゃんや幼児は、当然のように食べ物をこぼすんです。
赤ちゃんが食べ物をぐちゃっとつぶすのも、握るのにちょうどいい力加減がまだわからないからなんです。
ぜひ、そんな目線で赤ちゃんのぐちゃぐちゃに付き合ってみてはいかがでしょうか。
めげずに練習させてもらえれば、きっとママやパパのようにうまくなります。
まだまだ食事見習いなので、「おぉ、ここでつまづいたんだな」と冷静に見てみると楽しいですよ。
離乳食は味との出会い
赤ちゃんが笑うようになり、少しずつ周囲のものに興味をもつ様子をみると、「おもちゃ何にしよう~」とワクワクしますよね。
そして赤ちゃんがおもちゃに興味を持ち、必死にお口に入れて調べる姿って本当にかわいいですよね。
赤ちゃんにとって食べ物は、5感を最大限に刺激するおもちゃと同じです。
「赤いトマトだよ」
「甘いかな?すっぱいかな?」
「お口を閉じて、はい、ごっくん」
と、赤ちゃんの思いを代わりに口に出しながら離乳食を食べさせると、赤ちゃんの脳はどんどん発達します!
これを「代弁」と言います。
慣れないと、赤ちゃんへの声かけって「すごいねー」「えらいねー」くらいしか言えないんですよね。
そんなときは代弁のプロ!保育士さんへぜひ相談してみましょう!
つまり、赤ちゃんが「食べたか」「食べていないか」はさほど問題ではありません。
新しいおもちゃ(味)に出会って、また脳に新しい刺激が送れたよ!ということが大切なんです。
ほうれん草をべーっとしたときも、
「これが「苦い」っていうんだよ。」
「よくわかったね~。」
「ママはほうれんそう大好きだから、〇〇ちゃんもきっと大好きになれるよ。」
だけで充分なんです!!
そうすると赤ちゃんは、「そうか、この苦いのはほうれんそうって言うのか。僕はべーってしちゃったけど、ママは美味しそうに食べているってことは、そう悪いものでもないんだな。」と思えます。
この経験を積み重ねることで、食事からの栄養が本当に必要になる幼児期以降に、きっと「食べたい」と思える子になれるんじゃないかなと思います。
(もちろん、これも個人差があります。
幼児期に食べなかったとしてもそれはママのせいではないですよ。)
だからこそ、離乳食の時代に「ああ、ほうれんそう食べられなかった、鉄分が、栄養が・・・」なんて、悩む必要はまったくないんですよ!!大丈夫!!
赤ちゃんの脳にたくさんの食べ物情報をインプットしてるだけという気楽さで、赤ちゃんに食べ物をあげてみてくださいね。
一生懸命赤ちゃんのことを考えている真面目なママほど悩んじゃうんです。
声を大にして言いたい!離乳食は食べる練習の時期です!!
なんで食べ物をぐちゃぐちゃにしたり投げたりするの?
例えばみなさんが、全く知らないとある民族の村に招かれたとします。
「ヘイ!これはこの村で毎朝食べるんだぜ~おいしいぜ~一口で食べるんだぜ~」
と、いかにも怪しげな物体を渡されたら、一口で食べられますか?
私は絶対無理!これができる人はよっぽどのツワモノです!
赤ちゃんにとって、食事との出会いはそれと同じなんです。
だから口を開けなかったり、吐き出したり、ぐちゃぐちゃにして調べてみたりするんです。
私たちにとっては「たぶん5000回くらい食べたかな」というにんじんも、赤ちゃんにとってはまだ数回~数十回の経験です。
そりゃあ、「中どうなってんのかな?」って口から出したくなりますよね。
そう思うと、ちょっとおもしろくないですか?
そんな不安な赤ちゃんも、大好きなママやパパがニコニコ笑顔で美味しそうに食べている姿を見ると、「なんか大丈夫そうだな」と思って食べたくなったりするものです。
だから赤ちゃんは人が食べている方を食べたくなるし、育児書にも家族みんなでごはんを食べてねって書いてあるんですね。
でも実際、そうは言っても朝からぐちゃぐちゃにされると泣きたくなるのも本当ですよね。
私は、朝の出勤前に(私の)髪の毛に納豆擦りつけられた時には発狂してしまいました・・・。
- レジャーシートを敷く(防水なのでさっと拭くだけでOK)
- エプロンをつける(受け皿付きのものがおすすめ)
- 朝は食べてから着替える(親も)
- 汁ものなど、こぼれたら心が折れそうな料理は、心に余裕があるときだけ触らせる
などの対策はありますが、でもこの程度しかないんですよね。
だからこそ、離乳食は「ぐちゃぐちゃにしたり吐き出したりしながら脳に食べ物情報を取り込んでいる」という原理を理解し、いい意味であきらめてしまいましょう。
こうやってたくさん調べたりしているうちに、自分で考える力につながりますよ!
離乳食の悩みにはとらわれないで。
いかがでしたか?
産まれてから最初の1年間で、反射で授乳していた赤ちゃんは、手づかみで食事をとるまでに成長します。
- 離乳食は食べるための練習期間
- 離乳食は味との出会い
赤ちゃんは、ママやパパがくれた食べ物の情報を、たくさん脳にインプットし、それによってまた心も発達します。
たくさん練習を重ねればきっと上手に食べられるようになります!
ごっくんができたら、「おっお口が上手に閉じられるようになったねぇ」
べーってしたら、「よしよし、苦いを覚えたぞ」
ぐちゃぐちゃってしたら、「どんな情報が得られましたか?」
これくらい軽~い気持ちでいきましょう!
悩みすぎず、本当に大変ですが、ぼちぼちお付き合いくださいね♪
食事と並ぶお悩み常連「睡眠」。やっぱり気持ちの割り切りが大切です!
最後までお読みくださりありがとうございました。
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