2021年10月に発売された伊坂幸太郎さんの『ペッパーズ・ゴースト』。
作家生活20年超の集大成となる作品であり、本屋大賞の候補作としても話題になりました。
「どんな作品なんだろう?」「読んでみようかな?」と気になる方もいらっしゃると思います。
しかしながら、忙しい毎日の中で読書の時間を作るのは難しいものです。
読む本を選ぶ時点から行き詰まることもありますよね。
この記事では、ネタバレなしで『ペッパーズ・ゴースト』の魅力を解説していきます。
- 『ペッパーズ・ゴースト』はどんなお話?
- 『ペッパーズ・ゴースト』の見どころは?
- ペッパーズ・ゴーストの意味とは?
『ペッパーズ・ゴースト』は話を楽しみながら、人生の考え方に気づきをくれる作品です。
さあ、それでは早速『ペッパーズ・ゴースト』の世界を覗いてみましょう。
『ペッパーズ・ゴースト』のあらすじ【ネタバレなし】
まずは、この作品のカギを握る3つのキーワードがこちらです。
- 未来を観る中学教師
- 作中作の世界
- 壇先生が追う二つの事件
一つずつ解説していきますね。
1. 未来を観る中学教師
はじめに、この物語の主人公である檀先生をご紹介しましょう。
檀先生は「僕は未来が観えるだけで、誰かを救えるわけではない」という、特殊能力があるが故の悩みを抱えています。
どうにか相手に伝えてあげたいと思ってしまうが、どうにもならないことはどうにもならない。彼はそう言っていた。役に立つのは難しい、と。
『ペッパーズ・ゴースト』より
役に立たない無力感を背負った檀先生が、女生徒の書いた小説を読むことから物語は動き出します。
2. 作中作の世界
先程ご紹介した女生徒が書く小説が、作中作として作品冒頭から挿入されていきます。
一体どんな小説なのでしょうか?
『ペッパーズ・ゴースト』は、檀先生が奮闘する世界と、ネコジゴハンターが活躍する小説の世界が並走するスタイルで話が進んでいきます。
3. 壇先生が追う二つの事件
ある日、男子生徒の〈先行上映〉を観たことにより生徒の父親の監禁事件を知った檀先生。
そして、その事件が次の事件へと繋がっていきます。
二つの事件とは?
◉男子生徒の父親の監禁事件
◉テロ事件被害者の関係者が集う「サークル」のメンバーが企てる事件
二つの事件に巻き込まれていく檀先生の姿に、読者も引き込まれ物語はどんどん加速していきます。
- 事件がどのように解決するのか?
- 「サークル」のメンバーの思いとは?
- ネコジゴハンターの小説と現実世界の関係は?
- 無力感を抱える壇先生がどう変わっていくのか?
物語の後半は、ぜひ作品を手に取ってお楽しみ下さい。
『ペッパーズ・ゴースト』のここが面白い!
ここまであらすじをお読みいただき、物語の世界が少しずつ見えてきたでしょうか?
それでは次に『ペッパーズ・ゴースト』の見どころを解説していきましょう。
奇妙な二人組「ネコジゴハンター」
なんといっても本作で強烈な個性を放っているのが、作中作の小説で活躍するネコジゴハンターの二人です。
これが映画作品だったら、最優秀助演男優賞を授与したいほどの名脇役です。
悲観的なロシアンブルと、楽観的なアメショーという相反する組み合わせの二人が、作品の中に軽やかなリズムを生み出しています。
「ハラショー、アメショー、松尾芭蕉」
『ペッパーズ・ゴースト』より
駄洒落のような決め台詞から掛け合いの面白さまで、常に読者をクスッと笑わせてくれる愛されキャラですよ。
伊坂幸太郎の魅力を全部乗せ!
続いて、作家 伊坂幸太郎さんの魅力にも触れていきましょう。
伊坂さんの魅力といえば、やはり伏線回収の鮮やかさです。
物語に散りばめられていた伏線を、ラストに向かって気持ちよく回収してくれるスタイルにはファンも多いです。
もちろん本作でも伏線回収の醍醐味をしっかりと味わうことができますよ。
また先程ご紹介した、並走する二つの世界を視点を切り替えながら展開していく構成は、伊坂さんならではの緻密な計算が感じられます。
そしてファンの間では「伊坂語録」「伊坂節」とも表現される伊坂さんらしい表現の面白さにも注目してみましょう。
軽快な掛け合いと語りの奥に潜む、本質を突いたメッセージが心に残りますよ。
「あとは、忙しい時ほどよく考えてね。ヘディングだよ、ヘディングを使って」
『ペッパーズ・ゴースト』より
これは壇先生のお母さんが発したセリフです。
「頭を使って」を「ヘディングを使って」と表現する、伊坂さんならではのユニークさが感じられますね。
前を向きたい全ての人へのメッセージ
テロ事件被害者の関係者が集う「サークル」のメンバーたちは、大切な人を失った後の人生に絶望していました。
長い人生の中では、理不尽な出来事によって暗い闇の底へ落ちてしまうことがあります。
明日への希望も生きる意味も見失った「サークル」のメンバーたち。
彼らが出した答えとは何だったのでしょうか?
『ペッパーズ・ゴースト』の根底には、人生をどうとらえるかというテーマが隠されています。
人はみんな幸福な人生を願っています。
では苦しい時、悲しい時、絶望した時にどうやって前を向けば良いのでしょう。
本作には、前を向きたい全ての人へと贈るメッセージが用意されています。
ぜひ、本を手に取ってそのメッセージを受け取ってみてください。
タイトル『ペッパーズ・ゴースト』の意味
タイトルであるペッパーズゴーストの意味を知っていますか?
劇場などで使用される視覚トリックである。板ガラスと特殊な照明技術により、実像と板ガラスに写った「幽霊」を重ねて見せることで、効果を発揮する。
引用: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
視覚トリックと言われてもピンとこない方は、ディズニーランドのアトラクション「ホーンテッドマンション」に利用されていると聞けばイメージしやすいかもしれません。
小説の中で伊坂さんが仕掛ける視覚トリックの全貌が見えた時、私たちは見えているようで見えていなかったものに気付くのです。
『ペッパーズ・ゴースト』はどんな人におすすめ?
ここからは『ペッパーズ・ゴースト』をおすすめしたい人についてお話します。
- 伊坂幸太郎作品を初めて読む人
- 読書の楽しさを知りたい人
- 人生について考えたい人
伊坂幸太郎作品を初めて読む人
本作は伊坂幸太郎さんの得意技を全部詰め込んだアソートパックのような小説です。
様々な美味しさが堪能できるので、伊坂作品を初めて読む人におすすめできると言えるでしょう。
しかし、これまでにたくさんの伊坂作品を読破した人にとっては、得意技のパターンを知ってしまっているので物足りないと感じるかもしれません。
読書の楽しさを知りたい人
文章も軽やかで、エンターテイメント性にも満ちた作品です。
この作品には「本を読むって面白い」と感じさせる仕掛けがたくさん用意されていますよ。
約400ページの長編にも関わらず、あっという間に読み終えたという人が多いのもうなずける作品です。
人生について考えたい人
人生は自分のとらえ方次第で見える世界が変わります。
理不尽な事で不幸を感じた時には『ペッパーズ・ゴースト』に綴られる言葉から、人生をどのようにとらえるのか考えることができます。
伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』あらすじ・みどころのまとめ
今回は人気作家伊坂幸太郎さんの『ペッパーズ・ゴースト』について、あらすじや見どころを解説してきました。
このお話は計算された複雑な構成の物語ですが、作者のユニークな表現のおかげで軽快に読むことができます。
本作に隠されたメッセージからは、人生で起こるさまざまな辛いことから前を向く力をもらうことができますよ。
一つでも気になるポイントがありましたら、ぜひ『ペッパーズ・ゴースト』を手に取ってご覧くださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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