こんにちは!saayaです。
突然ですが、読者様は美術館に行かれたことはありますか?
私は絵を描くのは苦手なのですが、絵を見ることが好きで、学生時代から美術館によく通っていました。
多い時は1日3つの展覧会を見に行くこともあり、今でも大きな野望は「世界中の美術館を制覇すること」です。
しかし悲しいことに「美術はよく分からなくてつまらない」という声もあります。
実際にインターネットで「美術館」を調べても、「つまらない」という言葉が続くことも。
読者様のなかにも、美術館が近くになかったり、そもそも美術に興味がなかったり、色々な理由で行く機会がない方も多いではないでしょうか?
そこで今回は、一時は学芸員を目指していた私が「アートに興味がわかない」「美術館の楽しみ方が分からない」方に向けてとっておきの本をご紹介します!
タイトルはズバリ「名画たちのホンネ」。
何気なく手に取った本でしたが、即購入するほど面白い本でした。
「名画たちのホンネ」では、どんな人でもアートを楽しめるように、一風変わった名画の解説をしています。
この記事を読めば、きっとアートがもっと身近なものになり、苦手意識もなくなりますよ!
ひとつでも心から楽しめるものが増えると、読者様の人生がさらに充実したものになりますよね。
アートは小難しいものではなく、見た人それぞれが自由に解釈していいものです。
記事内でいくつか作品をご紹介しますので、一緒にアートの世界を楽しみましょう!
「名画たちのホンネ」から学ぶアートの楽しみ方とは?
美術作品は小説や映画よりもストーリーが伝わりにくく、それが美術に対する苦手意識をもつ1つの要因となっています。
私も昔、友人や家族に絵画の魅力を伝えるために試行錯誤しましたが、なかなか思うように伝えることができず、歯がゆい思いをしました。
「こんなに素晴らしい絵なのに、専門書のような説明しかできない」
当時はとても落ち込みましたが、ふと手に取った「名画たちのホンネ」を読んで、絵の魅力を伝える新しい切り口に衝撃を受けました。
「名画たちのホンネ」の最大のポイントは、名画自身に作品を語ってもらうことです。
多くの美術本は、作品に対して著者が解説することがほとんどですが、「名画たちのホンネ」は少し違います。
どこが違うのかというと、作品に描かれている登場人物や擬人化されたキャラクターが、絵に対する思いを語っているのです!
書き方もセリフ口調の文章がほとんどで、まるで作中に描かれている登場人物の独り言を聞いているようです。
愚痴や悩みをポロリとつぶやいたり、時には漫才を始めたりと、色々なシチュエーションで書かれているので、スラスラ読みやすいのもおすすめポイント!
絵のことを知らなくてもクスっと笑える内容になっていますし、筆者の「とに~さん」自身が絵について補足説明もしてくださっているので、理解も深まります。
ですので雑誌や小説を読むように、肩の力を抜いて美術の世界を楽しめますよ。
「名画たちのホンネ」を読めば、絵の中の登場人物になりきって絵の状況をイメージすることができるので、作品がより身近なものになります。
「え? それってどういうこと?」と疑問に思いますよね。
次の章では具体的な作品の紹介をしていくので、ぜひ読者様も登場人物になりきってみてください。
本に登場するおすすめ作品のご紹介
「名画たちのホンネ」では、西洋絵画から日本絵画まで幅広いジャンルの作品が紹介されています。
ここでは、私のおすすめする3点を取り上げますので、ぜひ絵を見ながらお読みください。
エドヴァルド・ムンク 『叫び』
美術の教科書で一度は目にしたことがあるこの絵。
多くの方が「ムンクの叫び」だと思っていますが、実際は違います。
「名画たちのホンネ」でも、このタイトルの勘違いについて次のように説明しています。
皆さん、僕の主張を聞いてくださーい!ずっと前から言いたいことがありましたー!(なーにー?)
この絵のタイトルを≪ムンクの叫び≫と勘違いしてる人がいますが、正しくは≪叫び≫の2文字だけでーす!
ムンクは画家の名前だぞー!(アハハハハ!)
引用元:「名画たちのホンネ」 とに~著/王様文庫
引用した文章だけでも、タイトルを勘違いされつづけ本当に困っている様子が伝わってきますね。
実は私も「ムンクの叫び」として覚えていました(汗)。
絵のタイトルには作者が思いが込められているのに、何世紀もの間、勘違いされ続けているなんてちょっとかわいそうです。
実はこのインパクトがある人物もムンク自身なのですが、ミイラがモデルじゃないかという説もあるんですよ!
このように、作者がどんな思いで絵を描いたのかあれこれ予想を立てるのも、絵を楽しむ醍醐味です。
またこの絵をパッと見ると、橋の上で悲鳴を上げているように見て取れますが、これも勘違いされていることの1つです。
実際は、急に不安感に襲われたムンクが叫び声の幻聴を聞きたくなくて、耳をふさいでいる姿を描き表しています。
ムンクは幼少期に母親、10代の頃に姉を亡くし、自身も病気がちだったことから「死と病」が常に身近にありました。
さらに、「叫び」を描いた当時は幻聴や幻覚に悩まされていたと言われており、背景が歪んでいるのも幻覚が原因と言われています。
では、ムンクの人生を知ったうえで、もう一度絵を見てみましょう。
当時心が不安定だったムンクの目には、目の前の空が血のように赤く見え、橋の下にはうねりのある大きな波が見えたのかもしれません。
もし私がムンクと同じような景色が見えたとしたら、同じように叫んだりうずくまってしまうと思います。
読者様は一体何をイメージしますか?
このように作者の当時の状況や背景を知ることで、より身近に作品を感じることができるのです。
ヨハネス・フェルメール 『牛乳を注ぐ女』
オランダの画家ヨハネス・フェルメールが描いたこの作品は、2018年に日本に来て当時大きな話題となりました。
『牛乳を注ぐ女』では、若いメイドが固くなってしまったパンに牛乳を注いで、自分の朝食用でパンプディングを作っている様子が描かれているとされています。
また絵をよく見ると、窓ガラスが1枚だけ割れていたり、壁に釘がささっていたり、まるで日常の一場面の写真を切り取った絵のように見えますね。
その理由は、フェルメールが「カメラ・オブスクラ」というピンホール現象を使った原始的なカメラを使って、映し出された映像を紙に写しとる“トレース”をしていたからだと言われています。
理由を聞くと「紙に写すだけなら誰でもできそうじゃない?」と思われる人もいるかもしれません。
そこで登場するのが、絵の中の登場人物であるメイドです。
彼女が本の中で代弁してくれています。
ほんなら、その装置を使ってたら、誰でもこんくらいの絵が描けるんちゃうかって?自分何言うてんねん。
そんなわけないやん。空間を包み込む柔らかな光の表現を見てみいな!
こんなん描けんのは、‘‘光の画家’フェルメールくらいなもんやで。
フェルメールいうんは、窓から差し込む光にリアリティを持たすために、パンとかパン籠の光が当たった場所に細かな白い点を点描してはんねん。
その技法の名前、なんていうんやったかな?ボランティア…あ、ちゃう!ポワンティエや!
引用元:「名画たちのホンネ」 とに~著/王様文庫
とに~さんは、メイドを“関西弁を話す女性”に見立て、いかにフェルメールが技法を駆使して傑作を描き上げたかを私たちに伝えています。
この「ポワンティエ」はフェルメールの作品に欠かせない技法で、他の作品にもたくさん登場します。
光をリアルに描くために、細かな点をたくさん打つ方法を思いつくフェルメールの発想力は、本当に驚かされますね。
まさに“光の画家”と呼ばれるにふさわしいですし、心血を注いで描いた光の表現だからこそ、いつまでも私たちの心に深く残る作品になっているのです。
葛飾北斎 『冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏』
北斎の作品はじめとする日本の浮世絵は、日本のみならず海外からも高い評価を受けています。
世界中の美術館に作品が点在しており、海外では「葛飾北斎展」が開催されるたびに、多くの人が押し寄せるほど根強い人気です。
遠近法を無視した大胆な構図は、当時見たものをその通りに描いてきた写実主義の画家たちにとって大きな衝撃でした。
このように浮世絵を含めた日本美術が、西洋の芸術家に大きな影響を与えた時代の流れを【ジャポニズム】と言います。
「神奈川沖浪裏」もジャポニズムを代表とする作品として紹介されており、「名画たちのホンネ」では、大波の中船をこいでいる人に代弁してもらっています。
だいたい、こんな風に波を表現した画家なんて、これまで一人もいなかっただろ。
飛沫は雪みたいだし。先端は鉤爪みたいになってるし。
手前の波なんて、富士山みたいな形になってるし。
独創的にもほどがあんだろ。
何?海外じゃ、この絵は<The Great Wave>って呼ばれて絶賛されてる?
波だけ褒めんなよ!その波のせいで、こちとら死ぬかもしれねぇんだぞ!
なんて日だ!
引用元:「名画たちのホンネ」 とに~著/王様文庫
版画を彫った彫師の繊細な技法やオリジナルの構図を褒めつつ、迫りくる波に慌てている様子まで伝わってきますね。
読者様は、子どもと絵本を読むときや小説を読むときに、絵の中の登場人物の気持ちを考えたことはありますか?
「名画たちのホンネ」は、まさに読書をするときに大切な想像力をかき立ててくれます。
絵の内容や技法が分からなくても、登場人物になりきって鑑賞するだけで、その絵がグッと身近に感じられるはずです。
ここまで3つの作品をご紹介しましたが、今まで経験したことがない絵の楽しみ方が出来たのではないでしょうか?
新しい視点で名画を鑑賞することを提案してくれた「名画たちのホンネ」は、どのような方が書いているのか気になりますよね!
次の章でご紹介します。
「名画たちのホンネ」の著者:「とに~」さんとは
「名画たちのホンネ」を書いたのは、「とに~」さんという元吉本興業のお笑い芸人です。
芸人活動の傍ら、趣味で続けたアートブログが人気となり、現在では【アートテラー】として講演やメディア活動をしています。
アートテラーという肩書について、とに~さんは著書でこう話しています。
美術に対して「難しそう」「つまらなそう」「とっつきにくそう」といったイメージを抱いている人は少なくありません。
そういう人たちに、「美術はともだち こわくないよ」と美術の楽しさを、面白おかしく語って伝える仕事。
アートのストーリーテラー、それがアートテラーです。
引用元:「名画たちのホンネ」 とに~著/王様文庫
学生時代の私は美術館で働きたくて、学芸員になるための勉強を学業と並行して取り組んでいました。
また、美術館で行う子ども向けイベントにボランティアとして参加し、子どもたちに美術の楽しさを伝えるお手伝いも経験してます。
この「アートテラー」という仕事は、私がまさに当時理想としていた「美術を通して人生を豊かにする」ことに通じるものがありました
今では趣味で美術鑑賞をするようになりましたが、「いつかこんな風になれると良いな」と勝手に憧れています(汗)。
とに~さんの最大の魅力は、誰が読んでも名画を楽しめるポイントを散りばめているところです。
専門用語だらけの解説より、とに~さんのフランクだけど伝えたい内容はしっかり押さえてある解説の方が、記憶に残りやすいではないでしょうか?
いつか子どもたちがこの本を読んで、これまで1つの作品に過ぎなかったものが「意味のある作品」に見えるといいなと密かに願っています。
「名画たちのホンネ」を読み終えて
私は美術史を専攻していたこともあって、美術に関する本は専門書や図録など、かたい文章の本ばかり読んでいました。
けれど同時に、子どもたちに絵の楽しさを伝えたいとなると、その文章をかみ砕いて説明するのはなかなか難しいとも感じていました。
「名画たちのホンネ」は、一見するとふざけて書いているように見えますが、伝えたいことはそのセリフの中にぎゅっと詰め込まれています。
絵の中の登場人物自身に説明させるという、まったく新しい発想で書かれているので、これまでとは違う視点で作品を楽しむことができました。
美術を楽しむのに正解はありません。
専門家の意見でさえ、1つの絵に対して数多くの説があり、いまだに議論されているものもあります。
大切なのは想像すること。
想像力を鍛えることで、相手の気持ちが分かるようになり、思いやりの心も育ちます。
「名画たちのホンネ」を読んで、アートは小難しく考えるものではなくて、純粋に作品を楽しむものだと、改めて感じました。
いつかまた美術館でボランティアすることができたら、この本を通して学んだ「純粋に作品を楽しむ」気持ちを忘れずに、アートの楽しみ方を伝えたいです。
美術に興味のない人は、最初はどんな所に注目すればいいのか分からないと思います。
なにか絵を見たときには、まずは登場人物になりきって絵の中の状況をイメージしてみてください!
もし美術館に行く機会がなくても、ネット上で作品が楽しめる各美術館のバーチャル展示や美術書はたくさんあります!
これをきっかけに、ぜひたくさんの作品に触れてみてくださいね。
「名画たちのホンネ」を読んでアートを楽しもう
今回は「名画たちのホンネ」をご紹介しました。
とに~さんは著書の最後でこう書いています。
この本を書いているタイミングで、美術館の多くが休業を余儀なくされました。
不要不急の対象とされたためです。
確かに、「不急」なのかもしれませんが、個人的には「不要」とは思ったことはありません。
なぜなら、美術作品を鑑賞することで想像力が養われるからです。
引用元:「名画たちのホンネ」 とに~著/王様文庫
単調な日常生活を送っていると、どうしても決断したり考えたりすることが面倒くさくなってしまいます。
私がまさにそうでした。
でも、なりたい自分や将来の夢を想像するとワクワクしませんか?
「想像すること」は誰にも邪魔されず、自分だけの中でできる楽しみです。
この本を読めば、美術の面白さが分かるだけではなく、1つの絵からどうやってイメージを膨らませるのか知ることができます。
アートに興味のない人だけではなく、日々のタスクに追われている人にもぜひ読んでいただきたいです。
きっと新しい視点をもって物事をとらえることができますよ!
さらに記事を読んで、少しでも美術館に行ってみようかな、アートって面白そうだなと感じていただけると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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