友達の誕生日、恋人へのラブレター、家族への感謝など、大切な人に気持ちを伝えたい!と思うことはありませんか?
メールやSNSで手軽にやり取りができるようになった今、手書きで手紙を書くことが減ってきているといいます。
便利な世の中になるほど、大切な人へ気持ちを伝えるのには手書きの手紙に勝るものはないと思います。
手紙を受け取るほうも、便箋や文字から相手のことが感じられたり、手書きで書いてくれたという気持ちが伝わってきたりして、とてもうれしいですよね。
ですが、いざ手紙を書こうと思っても、「相手の心を動かすような手紙ってどうやって書くの?」と悩んでしまう人も多いと思います。
この記事では、
- 感動する手紙の定番、結婚式で読まれる 花嫁から両親への手紙
- 大正時代の文豪、 芥川龍之介が書いた恋文
- 偉人野口英世を育てた、 母シカが息子に宛てた手紙
この3つのの手紙を参考に、感動する手紙の書き方を探っていきたいと思います。
花嫁の手紙で泣いてしまうのはなぜ?
感動の手紙といえば、結婚式のクライマックスで読まれる花嫁から両親への手紙を思い浮かべる人も多いと思います。
手紙の内容は花嫁さんそれぞれですが、
- 出席してくれたゲストへの感謝
- 手紙を読む相手(両親)への呼びかけ
- エピソード
- これからの決意
- 新郎の両親への言葉
という構成で書かれていることが多いです。
では、なぜ花嫁の手紙に泣かされてしまうのでしょうか?
ポイントは2つです。
- 情景が浮かぶエピソードで共感を誘っている
- 普段は言えない感謝の言葉を伝えている
情景が浮かぶエピソードで共感を誘う
具体的なエピソードとそのときに感じたこと、今振り返って思うことなど、そのときの景色や感情を描写するように伝えましょう。
両親だけでなく、ゲストたちの頭の中にもそのときの情景やストーリーが浮かび、心が動かされます。
これは両親への手紙だけではなく、学生生活をともにした友人や、職場でお世話になった先輩への手紙など、幅広く使えますね。
ポイントは、嘘を書かないこと。
手紙を送る相手に響くような、共有の思い出やエピソードを書いて心を揺さぶりましょう。
普段は言えない感謝の言葉を伝える
「いつもありがとう」や「大好きだよ」という言葉は、言われたほうはとてもうれしいですが、恥ずかしくて直接伝えられない人もいると思います。
面と向かっては言えない感謝の言葉や愛情表現などは、手紙だからこそできるのではないでしょうか。
チャンスだと思って、普段伝えられなかった思いを文字にして伝えましょう。
続いては、文豪、芥川龍之介の恋文(こいぶみ)を紹介します。
文章のプロである作家がどのような恋文を書いていたのか気になりますね。
芥川龍之介の情熱的な恋文
大正時代の文豪、芥川龍之介。
『羅生門』や『鼻』など、教科書に載っている作品もあるので知らない人はいないでしょう。
人間の苦しみや闇を描いた作品も多く、自身も「唯(ただ)ぼんやりとした不安」を理由に、35歳という若さで服毒自殺しています。
厭世的(悲観主義)とも言われた芥川龍之介が書いた、プロポーズの手紙をご紹介します。
文ちゃんを貰ひたいと云ふ事を、僕が兄さんに話してから、何年になるでせう。
貰ひたい理由はたったひとつあるきりです。さうして その理由は僕は 文ちゃんが好きだと云ふ事です。勿論昔から 好きでした。今でも 好きです。その外に何も理由はありません。
(中略)
僕のやってゐる商売は 今の日本で 一番金にならない商売です。その上 僕自身も 碌に金はありません。ですから 生活の程度から云へば何時までたっても知れたものです。それから 僕はからだも あたまもあまり上等に出来上がってゐません。(あたまの方は それでもまだ少しは自信があります。)うちには 父、母、叔母と、としよりが三人もいます。それでよければ来て下さい。僕には文ちゃん自身の口から かざり気のない返事を聞きたいと思ってゐます。繰返して書きますが、理由は一つしかありません。僕は文ちゃんが好きです。それでよければ来て下さい。
引用:一宮館「芥川龍之介書簡」
この手紙の感動ポイントは、
文章のテクニックなどではなく、真っ直ぐに気持ちを伝えている
これに尽きるのではないでしょうか。
文章のテクニックなどではなく、真っ直ぐに気持ちを伝える
この恋文は、芥川龍之介が24歳のときに、友人の姪で8歳年下の塚本文に宛てて書かれた恋文です。
作家が書いたとは思えない、1人の青年の恋心がストレートに伝わる手紙です。
龍之介と文は後に夫婦となりますが、この手紙以外にも熱烈な恋文を何通も送っています。
文は、自身が亡くなるまで龍之介からの恋文を大切に取っておいたといわれていることから、龍之介の恋文がいかに文の心に響いたかがわかると思います。
文章のプロであっても巧みな言い回しなどを用いたりしないのですから、真っ直ぐに思いを伝えるのが一番心に響くということですね。
続いては、日本の学者として知られる野口英世の母が、息子に宛てて書いた手紙をご紹介します。
野口英世の母、シカが息子に宛てた手紙
野口英世といえば、千円札の肖像としても有名ですが、その偉人を育てた母の感動的な手紙をご紹介します。
はやくきてくたされ
はやくきてくたされはやくきてくたされ
はやくきてくたされ
いしよのたのみてありまする
引用:野口英世記念館「母シカの手紙」
この手紙の感動ポイントは3つあります。
- うまく文章が書けなくても、自分の言葉で気持ちを伝えている
- 手紙を書くために文字を練習した
- 手紙により、支えてくれた母の愛情を思い出した
この手紙になぜ心が動かされるのか、手紙が書かれた背景と一緒にお伝えします。
うまく文章が書けなくても、自分の言葉で気持ちを伝える
野口英世は、1歳のときに誤って囲炉裏に落ち、左手が使えなくなるほどの大火傷を負います。
英世の家は貧しい農家でしたので、農作業ができなくなってしまった英世に対して母シカは責任を感じます。
それならば学問で身を立てられるようにと、母は懸命に働いて、当時は裕福な家庭の子しか通えなかった小学校へ通わせました。
英世は手のことでいじめられ学校に行かなくなってしまったこともありましたが、母親の涙ながらの説得や、学費のために懸命に働く姿に心を動かされ猛勉強をするようになります。
そして、学校の先生や友人が集めてくれたお金で左手の手術を受け、それをきっかけに医学の道を志します。
やがてアメリカに行き研究者となった英世は、学者としての地位を確立しましたが、研究に追われ帰国もままなりません。
渡米して12年、歳をとった母が息子の身を案じ、会いたくてたまらない気持ちを「はやくきてくたされ」と書いたのがこの手紙です。
これは手紙の一部分ですが、たどたどしい文章ながらも息子を思う母の切実な気持ちが伝わってきます。
うまく書こうとしたり遠慮したりせずに、どうしても伝えたい想いはそのままぶつけてしまうのもありではないでしょうか。
手紙を書くために文字を練習する
母シカは、幼い頃から丁稚奉公をしていたため、教育を受ける機会がありませんでした。
幼い頃、独学で文字を覚えたことはありましたが、この手紙を書くために囲炉裏の灰を指でなぞって練習したといわれています。
この手紙を受け取った英世も、母親が文字を書けることを知らなかったと言っています。
今の時代、教育を受けられず文字が書けないということはあまりないと思いますが、普段字をうまく書くのが苦手な人が、心を込めて丁寧に書くだけでも気持ちは伝わるはずです。
手紙により、支えてくれた母の愛情を思い出させる
英世が帰国したのは手紙を受け取ってから3年後でしたが、母の思いが伝わったからこそ再会を果たせたのだと思います。
英世が日本に滞在した2ヵ月間、恩師や母と講演旅行に出かけ、周りの人が感動してしまうほどの親孝行をしたそうです。
そのときのことを母シカは「まるでおとぎの国にいるようだ」と語っています。
なかなか会えない人に「お変わりありませんか」と手紙を出すのもいいですね。
「久しぶりに会いたいな」と思ってもらえるかもしれません。
感動する手紙の書き方はテクニックではない
ここまで3つの手紙から、感動する手紙の書き方をご紹介しました。
- 花嫁が両親に宛てた手紙
- 芥川龍之介が書いた恋文
- 野口英世の母が息子に宛てた手紙
- 情景が頭に浮かぶようなエピソードを書く
- 普段、言えないことや、直接伝えられない気持ちを書く
- 相手を思う気持ちを素直に書く
- 飾らない、自分の言葉で書く
- 心を込めて、丁寧な字で書く
相手の心を動かす手紙は、文章をうまく書く技術など必要ないことがわかりますね。
つたない文章でも、心をこめて書いたと相手に伝わることが大事です。
大切な人を心に思い浮かべて、あなたの伝えたい思いを手紙に書いてみませんか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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