震える牛の元ネタとは?実際にあった食品偽装事件を紹介!

私は小説を読むのが大好なのですが、事件物は特に面白く好きです!

相場英雄さんの「震える牛」もめちゃくちゃ面白く、殺人事件を解決していく面白さと衝撃的なラストで驚かされました。

お読みになられた方の中には、「食品偽装は実際に起こっている問題ではないか」「震える牛は何かの事件をベースに書かれたのでは」と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相場さんはあるインタビューで「新聞記者をやっていた時の後輩記者の実家が酪農家で、BSE問題や生々しい食品業界の実態を知り、『震える牛』を書こうと思った」とおっしゃっています。

よって、おそらく「震える牛」は何か事件の元ネタがあり、それをベースに書かれたと思われます。

この記事ではその元ネタと考えられる事件をご紹介します。

目次

「震える牛」のBSE問題とは何か

 まずは「震える牛」のあらすじをおさらいしておきましょう。

 5年も解決されていない居酒屋での獣医師と暴力団員の殺害事件を、閑職についている警察官が捜査していくうちに、大手スーパーマーケットが食品偽装に関係していることを知ります。

捜査が進むにつれ、代表取締役社長が計画的に実行した、BSEに感染した牛と食品偽装が絡んだ殺人事件だったことが分かります。

そして、最後は警察とスーパーマーケットを経営する会社が癒着していた!と衝撃的なラストで終わります。

BSE問題は深刻な問題

 小説の中で取り上げられているBSE問題ですが、獣医師が、ある畜産場にBSEにかかった牛がいることを世間に公表しようと考える場面が出てきます。

つまり、世間に知らせなければいけないほど重大な病気と分かりますね。

 BSEがどのような病気で、感染した牛を食べると人体への影響はあるのか、すごく気になりますよね。

調べてみると国が対策を取らなけらば行けないほど深刻な病気であることが分かりました。

BSEとは

 タイトルの「震える牛」とはBSEに感染した牛のことです。

 BSEとは牛海綿状脳症とも言われ、牛の脳がスポンジのようになってしまう病気です。

BSEについて厚生労働省のホームページでは次のように記載されています。

 牛海綿状脳症(BSE)は、牛の病気の一つで、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染した場合、牛の脳の組織がスポンジ状になり、異常行動、運動失調などを示し、死亡するとされています。かつて、BSEに感染した牛の脳や脊(せき)髄などを原料としたえさが、他の牛に与えられたことが原因で、英国などを中心に、牛へのBSEの感染が広がり、日本でも平成13年9月以降、平成21年1月までの間に36頭の感染牛が発見されました。

引用:厚生労働省HP

人への感染

 BSEに感染した牛を摂取することで、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発病すると考えられています。

この病気は若い方に見られ、発病してから死亡までの期間が短いことが特徴といわれています。

神経難病のひとつで、抑うつ、不安などの精神症状で始まり、進行性認知症、運動失調等を呈し、発症から1年~2年で全身衰弱・呼吸不全・肺炎などで死亡します。

引用:厚生労働省HP

対策と現在の状況

 BSEはとても恐ろしい病気だと分かりますね。

小説で獣医師が世間に発表しようとした理由にうなずけますし、スーパーマーケットの社長が隠したいと思ってしまうのは当然かもしれません。

 日本ではもちろんちゃんとした対策を取っています。

 日本や海外で、牛の脳や脊髄などの組織を家畜のえさに混ぜないといった規制が行われた結果、BSEの発生は、世界で約3万7千頭(1992年:発生のピーク)から7頭(2013年)へと激減しました。日本では、平成15年(2003年)以降に出生した牛からは、BSEは確認されていません。 

引用:厚生労働省HP

 また、BSEが発生した国からの牛肉の輸入を禁止し、輸入を再開した国からの牛肉は検疫所で検査されています。

「震える牛」の元ネタと考えられる食品偽装事件

 「震える牛」の元ネタと考えらる食品偽装の事件は、2007年に発覚した「ミートホープ株式会社の牛肉ミンチ偽装事件」かもしれません。

実際の事件と小説の設定で同じ箇所が見受けられます。

ミートホープの牛肉ミンチ偽装事件とは?

 北海道苫小牧市にあった食品加工卸売り会社のミートホープ株式会社は、田中稔氏が1976年に創業しました。

創業当時は食肉の加工と販売が中心でしたが、その後の事業展開により、従業員数は約100人、グループ会社全体で500人ほどに会社は成長します。

しかし、2007年に元常務取締役の内部告発により、廃棄肉や牛や豚の内臓などや添加物を配合していた偽装が明るみになりました。

「震える牛」ミートホープの牛肉偽装事件との類似点

「震える牛」の元ネタがミートホープの牛肉偽装事件だと思われる理由として、次の3つの類似点があります。

  1. 家族経営
  2. 製造機の開発
  3. 内部告発

それぞれ詳しく解説しますね。

1. 家族経営 

 ミートホープは田中稔氏が築いた会社で、役員やグループ会社を田中氏の息子で固めた家族経営でした。

従業員は逆らえない状態だったそうです。

「震える牛」も食品偽装をした牛肉を販売していたスーパーマーケットの代表取締役社長の祖父が創業者、会長がその息子という家族経営です。

会長の経営方針は絶対で、誰も逆らえない設定でした。

2. 製造機の開発

 ミートホープが開発した「挽肉の赤身と脂肪の混ざり具合を均一にする製造器」は食品偽装に一役買いました。

この機械は、文部科学大臣表彰創意工夫功労賞を受賞しています。(後に返還)

 「震える牛」では、老廃牛の屑肉や血液を混ぜる「マジックブレンダー」を開発し、食品偽装を行っています。

3. 内部告発

 ミートホープの偽装事件は、元常務取締役の内部告発により明るみになりました。

新聞社、テレビ局、出版社に告発しますが、初めは誰も取り上げず5年の歳月をかけてやっと世に知られます。

「震える牛」も同様、元社員が記者に食品偽装を内部告発しています。

「震える牛」の元ネタ まとめ

  • 震える牛とはBSEに感染した牛のこと。
  • BSEに感染した牛は脳がスポンジ状になってしまう。また、感染した牛を摂取すると変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症することも。
  • 「震える牛」が食品偽装がテーマの小説。「ミートホープの牛肉偽装事件」が元ネタだと考えられている。

 余談ですが、「震える牛」では食品偽装は隠されたままでしたが、ミートホープ事件では1年の歳月をかけて明るみになります。

その後、田中稔氏は4年の実刑判決を受けました。

  また、日本たばこ産業、ミスタードーナツ、イオン、学校給食などにミートホープの商品が使われていたことが分かっています。

身近な食品が偽装されていて、私たちは知らず知らずのうちに口にしている可能性があったというわけです。

 小説で書かれている事件ならエンターテイメントの一つとして楽しめます。

しかし、実際に起きていた事件であり、私たちが口にするものが偽装されていたと知ると恐怖でしかありませんね。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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