テレビでいつもよく見る芸能人や著名人。
コロナ禍となった昨今は、悲しいお別れのニュースがいくつもありました。
なんだか知り合いが亡くなった時みたいにショック……
著名人のお悔やみのニュースは、会ったことがなくても寂しい気持ちになりますよね。
亡くなられた際には、多くの友人たちが故人を偲んでコメントを出します。
コメントの中でも弔辞は、特に親しい間柄の人が読むため、注目することも多いのではないでしょうか?
この記事ではタモリさんと甲本ヒロトさんの弔辞をそれぞれ紹介します。(以下敬称略)
故人と読み手の素敵な関係が伺えますよ。
著名人の弔辞はなぜ心に響く?
著名人の亡くなったニュースは大抵、前触れもなくやってきます。
弔辞は突然の別れにショックを受けている多くの人たちの心に響きます。
なぜ心に響くのでしょうか?
- 故人と弔辞を読む人の関係性や、お互いの知られざるエピソードに触れられるから
- 故人と読み手、双方のすばらしい才能や人柄を再確認できるから
知らなかった一面やその人らしいエピソードに感動します
タモリの弔辞はなぜ伝説的?
タモリが弔辞を読んだのは、漫画家の赤塚不二夫の葬儀でした。
まだ芸人として売れる前に出会い、ずっとお世話になっていた赤塚不二夫。
誰もが知る天才ギャグ漫画家です。
なぜタモリの弔辞は伝説的なの?
読み上げていた原稿が実は白紙だったからです。
歌舞伎に「勧進帳」という演目があります。
兄・頼朝から謀反を疑われた義経と弁慶一行は山伏に変装し、逃げる。
関所を通過する際に、番人である冨樫に、山伏なら持っているであろう勧進帳を読めと言われる。
弁慶は白紙の巻物を取り出し勧進帳として読み上げ、難を逃れる。
葬儀時、タモリのマネージャーの名前は「トガシ」。
タモリは「勧進帳」をネタとしてさりげなく弔辞に取り入れていたのです。
タモリと赤塚不二夫の関係性
タモリは上京してまもない頃、新宿のバーのお笑いライブで赤塚不二夫に出会います。
自身のお笑いの才能を認めてくれ、生活のサポートをしてくれたのが赤塚不二夫でした。
博識なタモリの知識の礎となるような話もたくさんしてくれました。
赤塚不二夫との関係性について、タモリは弔辞でこのように例えています。
- 父
- 兄
- はるか年下の弟
二人は仲間とともにたくさんの時間を過ごしました。
タモリに多方面で影響を与え、支えてくれた赤塚不二夫。
彼の人生は、人の良さから損をすることも多かったですが、無邪気な一面も魅力的だったのですね。
弔辞の内容
タモリが淡々と話すなかに、何十年と深い関係にあった赤塚不二夫への思いが溢れています。
弔辞
8月の2日にあなたの訃報(ふほう)に接しました。6年間の長きにわたる闘病生活の中で、ほんのわずかではありますが回復に向かっていたのに、本当に残念です。
中略
あなたの考えは、すべての出来事、存在をあるがままに前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は、重苦しい意味の世界から解放され、軽やかになり、また時間は前後関係を絶ちはなたれて、その時その場が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは見事にひとことで言い表してます。すなわち、「これでいいのだ」と。
中略
あなたはいまこの会場のどこか片隅で、ちょっと高いところから、あぐらをかいて、ひじをつき、ニコニコと眺めていることでしょう。そして私に「おまえもお笑いやってるなら、弔辞で笑わしてみろ」と言ってるに違いありません。あなたにとって死もひとつのギャグなのかもしれません。私は人生で初めて読む弔辞があなたへのものとは、夢想だにしませんでした。
私はあなたに生前お世話になりながら、ひと言もお礼を言ったことがありません。それは肉親以上の関係であるあなたとの間に、お礼を言う時に漂う他人行儀な雰囲気がたまらなかったのです。あなたも同じ考えだということを他人を通じて知りました。しかしいまお礼を言わさしていただきます。
赤塚先生本当にお世話になりました。ありがとうございました。
私もあなたの数多くの作品のひとつです。
合掌。
引用:日刊スポーツ
タモリの弔辞には、赤塚不二夫がまるでその場にいるような温かさも感じます。
あぐらをかきながら片ひじをついて、バカボンのパパのように笑っている姿が想像できますよね。
弔辞の締めに自身を「赤塚不二夫の作品の一つ」と言ったことも、名言として話題になりました。
甲本ヒロトの弔辞の魅力とは?
THE BLUE HEARTSやザ・クロマニヨンズのボーカル甲本ヒロトの弔辞も話題になりました。
親交のあった先輩ロック歌手、忌野清志郎への弔辞です。
マイクの前に立ち、弔辞を読む甲本ヒロトのいでたちは、黒の革ジャン。
眠っている忌野清志郎がステージ衣装と聞いて、合わせたつもりが浮いてしまう結果になりました。
忌野清志郎はステージ上の人だから、合わせればこうなってしまうのは仕方ないと納得するのです。
弔辞は繰り返される言葉や逆説的な話し方が、歌の歌詞のようでした。
一生忘れないよ。短いかもしれないけど、一生忘れない。ほんで、ありがとうを言いに来たんです。数々の冗談、ありがとう。いまいち笑えなかったけど。はは……。今日もそうだよ、ひどいよ、この冗談は……。
うん。なるべく笑うよ。そんでね、ありがとうを言いに来ました。清志郎、ありがとう。それから後ろ向きになっちゃってるけど、清志郎を支えてくれたスタッフのみなさん、それから家族のみなさん、親族のみなさん、友人のみなさん、最高のロックンロールを支えてくれたみなさん、どうもありがとう。どうもありがとう。
で、あとひとつ残るのは、今日もたくさん外で待っている、あなたのファンです。彼らにありがとうは、僕は言いません。僕もそのひとりだからです。それはあなたが言ってください。どうもありがとう! ありがとう!
引用:ログミーBiz
一人のファンとして、ロック歌手忌野清志郎への尊敬も感じられる弔辞ですね。
著名人の弔辞は美しく心に響く【まとめ】
著名人の弔辞が心に響くのは、知られざるエピソードやお互いの才能や関係性を再確認するからです。
今回はタモリと甲本ヒロトの美しい弔辞を紹介しました。
タモリの弔辞は以下の点が魅力的でした。
- 白紙の弔辞で「勧進帳」をまねる
- タモリも赤塚不二夫もお礼を言い合うのが嫌いで同じ考えだった
- 初めてのお礼とともに自身も「赤塚不二夫の作品の一つ」と述べる
甲本ヒロトの弔辞も、話す調子や繰り返す言葉が歌の歌詞のようで、グッと聞く人の心を熱くさせます。
よく知っている著名人の死は、思った以上に自分の心にダメージを与えることもあります。
故人を偲んで捧げる美しい言葉に触れて、自分の心を癒してみるのもよいのではないでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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