読者さまソロモンの偽証って話題の作品で気になるけれど、原作は長くて複雑そうだな……。
ベストセラー作家、宮部みゆきさんの最高傑作と謳われている「ソロモンの偽証」。
本好きなら誰もがタイトルを聞いたことがあるのではないでしょうか?
映画やドラマにもなり、話題になったこの作品の原作を読んでみたい方も多いはず。
しかし、原作はハードカバー3冊ととてもボリュームがあり、難しそうだし途中で挫折してしまわないかと尻込みしてしまいますよね。



おおまかな概要やあらすじを知れたら読むきっかけが持てるかも!
この記事では、そんな方のために「ソロモンの偽証」のあらすじや登場人物について解説しています。
- ソロモンの偽証のあらすじ
- 多数いる登場人物の中でも特に主要な人物の紹介
- 物語の核心を突くあらすじ
- 映画やドラマとの違い、楽しみ方
あらすじを知れば、ミステリー要素だけでなく青春群像劇であるこの作品を、きっと読んでみたくなりますよ!
ぜひ最後までお読みください!
「ソロモンの偽証」とは?作品の基本情報


その法廷は14歳の死で始まり偽証で完結した――。
引用:宮部みゆき「ソロモンの偽証」特設サイト「インタビュー」より
「ソロモンの偽証」のソロモンとは「ソロモン王」のこと。
旧約聖書に登場する知恵の王で、神託を受けて人を裁くことを許された人物です。
そして「偽証」とは偽りの証拠を意味します。
この作品は、「偽りの証拠を見破って公平な判断を下す」ことがテーマとなっています。
まずはそんな「ソロモンの偽証」の基本情報から解説していきますね。
原作の概要
著者は、ベストセラー作家宮部みゆきさん。
宮部さんの作家生活25年の集大成、現代ミステリーの最高峰といわれている壮大な長編ミステリーです。
2012年に刊行されたハードカバーの単行本は全3巻。
2014年9月から3ヶ月連続刊行された文庫版は全6巻。
とてもボリュームがありますが、ひとたび読み始めると続きが気になってしまい、ページを捲る手が止まらなくなるような魅力に満ち溢れた作品です。
主なテーマと作品の特徴
本作の時代背景は、バブル真っ只中の1990年の東京下町。
どこか不安定な社会情勢で、物語に出てくる学校や各家庭にも経済的格差や環境の違いがあります。
そんな中、とある中学校で起きた一人の生徒の死。
同級生たちがその真実を追い求めるミステリーであると同時に、多感な時期を生きる少年少女たちの青春群像劇でもあります。
現代に比べ、携帯電話やインターネットも普及しておらず、その不便さが物語にリアリティを与えています。
社会の歪みや大人たちの思惑が交錯する中、少年少女たちは果たして真実にたどり着けるのか。
人間の悪意や、真実と事実、正義とは何かを問う人間ドラマも描かれていて、とても読み応えのある物語です。
ソロモンの偽証のあらすじ(ネタバレなし)


ここからは、ソロモンの偽証のあらすじを、物語の核心を突くネタバレをせずに解説していきますね。
また、たくさんの登場人物がいるため、主要なキャラクターもあわせて紹介します。
主要キャラクター紹介
さまざまなキャラクターが登場する本作の中でも、特に重要な役割を担う人物たちがこちら。
- 藤野涼子:文武両道で優等生のクラス委員長。刑事の父親、弁護士の母親を持ち、まっすぐで正義感が強い。検事として校内裁判を取り仕切る。
- 神原和彦:他校生だが、柏木の友人。過去にとある秘密を抱えながらも、冷静な観察力で弁護人として裁判に参加。
- 野田健一:涼子のクラスメイト。柏木の遺体の第一発見者。裁判では弁護助手を務める。
- 大出俊次:札付きの不良。柏木殺害の容疑をかけられている被告人。
- 三宅樹理:柏木の死に関する告発状の差出人。家庭環境が複雑で、見た目にコンプレックスがあり、それが原因で大出にいじめられていた。
- 柏木卓也:中学校の屋上から転落死した。彼の死が今回の裁判の論点となる。
この他にも、校長や担任を始めとする教師たちや生徒たちの親、警察やジャーナリストなども登場し、この事件と裁判に関わっています。
物語の導入部分
クリスマスの朝、中学2年生の男の子「柏木卓也」が学校の屋上から転落して死亡します。
警察は事故として判断しますが、中学校の校長、そして主人公「藤野涼子」の元にとある告発状が届きました。
その内容は、「柏木卓也は殺された。殺したのは同級生の大出俊次たちだ」という衝撃的なものでした。
校長は告発状を隠蔽しようとしますが、何者からかマスコミにリークされ記事になってしまいます。
学校内でも本当に柏木は自殺だったのか、大出が殺したのか、と生徒たちの間で噂や不信感が募っていき、やがてこの問題は学校や地域社会を揺るがすような大きな騒動となっていくのでした。
生徒たちによる「校内裁判」の始まり
不穏な空気に包まれていく中、柏木や大出のクラスメイトでクラス委員長の藤野涼子は、自分たちの手で真実を明らかにしようと「校内裁判」を開廷することを提案します。
もちろん周囲の大人たちは猛反対。
しかし、涼子たち生徒の強い意志を汲んだ一部の大人たちの協力や、柏木の友人であった「神原和彦」も加わり、校内裁判は開廷の準備を着々と進めていきます。
校内裁判、それは検事や弁護人、判事などすべてを生徒たちだけで担うという過酷な挑戦でした。
やがて夏休みがやって来て、遂に校内裁判は開廷。
証人として出廷するのは、大出を始めとする同級生たちや教師、事件に関わった人々です。
それぞれの証言から柏木の新たな一面、複雑な人間関係、さらには学校や各家庭に潜む問題が浮き彫りになっていきます。
告発状は果たして本当なのか。
一体誰が「嘘」(=偽証)をついているのか。
涼子たちは時に迷い、ぶつかりながらも「事実」を積み上げ、柏木卓也の死の「真実」へと迫っていくのでした。
物語は3部構成となっており、大きく「事件」「決意」そして「裁判」に分かれています。
公式サイトを参考に、複雑な相関図をシンプルに整理し、「長編だから読み進めるのが難しいかも」という先入観をなくしていきましょう。
相関図はこちら 宮部みゆき「ソロモンの偽証」特設サイト 相関図



物語が進むにつれ、登場人物の関係性が変化していくのも面白いですよね!
ソロモンの偽証の物語の核心(ネタバレあり)


※ここからは、一部物語のネタバレを含みますのでご注意ください!
柏木卓也の死の真相を巡り、生徒同士の不信感が募る中、さまざまな思惑や憶測が飛び交います。
大出を疑う者、彼の汚名を晴らすべく真実を追求するため校内裁判に奮闘する涼子たち。
事実を隠蔽しようとする学校や、それを嗅ぎつけるマスコミ。
大出への復讐心から告発状を作成した三宅樹理とその友人、浅井松子。
松子が不慮の事故に遭って亡くなってしまったり、クラス担任が襲われたり、大出の家が放火にあったり……と、さまざまな事件や事故が涼子たちの周りで起きます。
やがて裁判も佳境を迎え、弁護人である神原が校内裁判の発起人であることを語ると、物語は核心へと迫るのでした。



ここからは、結末のネタバレを含むあらすじを解説していきます。
死の真相と「校内裁判」が導く結果
神原は、母を殺害した父がその後自らも命を断つという、複雑な家庭環境について告白します。
塞ぎ込んでいた時に、柏木に出会ったいう過去を語る神原。
ある日柏木は、神原に過去のトラウマを克服しようと「ある提案」を持ちかけますが、その魂胆は神原が途中で挫折することでした。
というのも、その頃柏木は大出と衝突し不登校になっていたのです。
プライドの高い柏木にとって、転校するなどの選択は「負け」を意味します。
この現状をどう打破するか悩んでいた折、柏木は神原に出会い、自分よりも不遇な境遇である彼と話すことで優越感を感じていたのです。
しかし神原は見事トラウマを克服し、柏木の思惑通りにいかず、柏木にとって面白くない結果となるのでした。
クリスマス前日の夜、柏木は神原を学校の屋上に呼び出します。
神原は柏木に感謝を伝えるのですが、逆に柏木は神原を見下していたことを打ち明け怒りをぶつけるのでした。
そして「この場を去るのなら飛び降りてやる」と脅し文句を投げるものの、神原は柏木を置いて屋上を去ってしまいます。
翌朝、遺体となった柏木のことを知った神原。
自責の念に駆られた彼は「自身が裁かれるべきだ」と裁判を提案したのでした。
この神原の発言により、事件のあらましが明らかとなります。
大出は無罪、神原も罪に問うことはなく、自ら死を選んだ柏木自身が犯人である、という形で裁判は終結します。
読後に残るメッセージ
柏木卓也の死の真相はやるせないものでした。
読後は、どこかずっしりとした余韻が残ります。
人間の弱さや醜さ、強さや気高さといった「人間のリアル」を描いたこの物語は、臨場感たっぷり。
「俯瞰」で進むストーリー展開だからこそ、涼子を始めとする生徒たちの、裁判を通し、考え学び成長していく姿に胸を打たれます。
校内裁判の目的は、「柏木を殺した犯人を見つける」ためのものではありませんでした。
彼がなぜ死ななければならなかったのか、事実を見極め、真実と向き合うことの難しさを教えてくれる場だったのでしょう。
映画版やドラマ版との違いと楽しみ方


ソロモンの偽証は、映画化やドラマ化もされています。
ここではそれぞれどのような違いがあるのか、どれから手を付けるべきかを解説していきますね。
ぜひ参考にしてみてください。
原作と映画・ドラマの表現の違い
映画は2015年、前後編の2部作で公開されました。
続く2016年に韓国でドラマ化、2021年に国内でドラマ化、放送されています。
それぞれの違いとメリット・デメリットを見ていきましょう。
- 心理描写が圧倒的に深い
- 真相に至るまでの伏線が丁寧
- 作品のテーマが最も濃い
- ハードカバー3巻、文庫版6巻ととにかく大ボリュームで長い
- ストーリー展開がゆっくりなので早く真相を知りたい人には重く感じる
- 2本の映画で内容をサクッと理解できる
- キャストの演技にリアリティがある
- ストーリーがスピーディーで分かりやすい
- 時間が限られるため一部キャラクターの背景がカットされている
- 物語のテーマ性が原作よりも軽く感じられる場合がある
- 映画よりも時間が確保されるので原作の要素を多く盛り込んでいる
- 原作ほどではないものの心理描写がしっかりと描かれている
- ストーリーの流れをじっくりと理解できる
- 映画よりも時間が長い(視聴に時間がかかる)
- キャスト、演出が好みに合わない場合がある
映画版の中学生キャストは、1万人の応募があったオーディションの中から選出されました。
主人公の藤野涼子役の藤野涼子さんは、この映画で主役デビューということを機に役名を芸名にしたほど。
実際、彼女の演技はとても高評価でした。
予告編だけでも、彼女を始めとする中学生キャストの演技力の高さや、脇を固める豪華俳優陣の皆さんの迫力が伝わります。
ここでは、映画版を配給している松竹からUPされている予告編の動画を紹介します。
こちらは同じく松竹より、物語の核心に迫る後編の予告編です。
「ソロモンの偽証」後編『裁判』 予告編
ドラマ版は、舞台が中学校ではなく高校という大きな改変があります。
その分時代背景がより現代に近く、スマホや動画配信という現代ならではの方法で噂が拡散されるシーンなどが描かれています。
子どもたちも理解しやすく、テーマについて考えるきっかけを掴みやすくなっていますよ。
原作と映画・ドラマはどれから見るべき?



それぞれメリットとデメリットがあるけれど、結局どれがいいんだろう?
どれから見るべきか、以下のとおり目的別にまとめてみました。
- まずはサクッと全体像を知りたい!という人は「映画」
- 人間ドラマや作品を深く理解したいが、原作は長くて自信がない人は「ドラマ」
- 作品のテーマや心理描写、伏線すべてを味わいたい人は「原作」
それぞれ内容を補完し合うような関係なので、3つを比較するとより楽しめるでしょう。



「ソロモンの偽証」の魅力をすべて余すことなく楽しみたい方へ、私のおすすめの順番を紹介します!
- まず映画で世界観を知る
- ドラマで深い部分を補強する
- 最後に原作で真相とテーマをじっくりと味わう
ちなみに、原作文庫版の最終巻には書き下ろしの中編が収録されていて、20年後の涼子を描いています。
ご自身の楽しみ方で作品に浸ってくださいね。
「ソロモンの偽証」のあらすじを知って原作や映像作品を存分に楽しもう
「ソロモンの偽証」は、ミステリーでありながら、家族や学校問題・友情・嫉妬・心の傷など、人間のリアルさを丁寧に描いた作品です。
この記事では、原作の概要からネタバレを含むあらすじや映画版、ドラマ版との違いまで解説しました。
原作の基本情報をまとめました。
- 著者はベストセラー作家宮部みゆきさん
- 宮部さんの作家生活25年の集大成である壮大な長編ミステリー
- 単行本は全3巻、文庫版は全6巻でそれぞれ刊行
1人の生徒の死を巡り、校内裁判が開かれ、生徒たちが真実を追求しながら成長していく姿に胸を打たれる物語です。
長編でも読みやすい構成で、キャラクターの心理描写がとても深く、読み始めればあっという間に物語に引き込まれるでしょう。
原作や映画、ドラマの違いとそれぞれの楽しみ方は以下のとおり。
- サクッと全体像を知りたい!という人は「映画」
- 原作は長くて自信がない人が物語を深く理解したい人は「ドラマ」
- 作品のテーマや心理描写などをしっかり理解したい人は「原作」
「ソロモンの偽証」を原作から映像作品まで余すことなく楽しみたい方には、こちらの順番で見てみるのをおすすめします。
- まず映画で世界観を知る
- ドラマで深い部分を補強する
- 最後に原作で真相とテーマをじっくりと味わう
あらすじや概要を知ったら、ぜひ原作を手にとって読んでみてくださいね。
この記事がきっかけとなったら嬉しいです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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