ここ数年、世界中で異常気象が観測されています。
日本では、去年は新潟県上越市で40.0度、北海道で37~39度台を記録し、沖縄より北海道の方が暑いという異常高温が観測されました。
ヨーロッパなどでも、夏は本来比較的涼しく過ごしやすい季節であったはずが、異常高温によって死者まで出る事態となり、日本国内でもたびたび異様な暑さに困惑する人々の様子が報道されていました。
しかし今年の日本の夏は、去年までに比べると涼しい日が多い印象です。
過ごしやすい日が多いのは喜ばしいですが、農業など経済的な打撃を受ける産業も多く、都市部の人々の生活にもすでに野菜の価格上昇などの形で影響が出始めています。
2015年、イギリスで開かれた王立天文学会において、「2030年代に太陽の活動が60%低下し地球は小氷河期に入る」という研究が発表されました。
今回は、
- 太陽の活動低下はどのように起こるのか
- もし本当に小氷河期が始まった場合に出てくる影響
についてご紹介していきたいと思います。
太陽の活動低下はどのように起こる?

この発表をした英国・ノーザンブリアン大学のジャルコヴァ教授によると、太陽内部には2つの異なる磁気波があり、この2つは11年周期で変化するそうです。
この2つが、2030年ごろに起こる変動によって互いに相殺しあうことにより太陽の活動は6割も低下し、黒点の数は著しく減少するとされています。
太陽の内部構造について詳しく紹介した記事がありますので、こちらも是非読んでみてくださいね。
太陽の温度は実は平温⁉︎内部構造と26度説を詳しく解説します
マウンダー極小期
太陽の活動状態は、マウンダー極小期のようになるといわれています。
マウンダー極小期とは、太陽黒点の数が著しく減少した1645年ごろから1715年ごろにかけての期間の呼称です。「マウンダー」という名称は、黒点の消失について過去の記録を研究した太陽天文学者、エドワード・マウンダーの名前に由来します。
マウンダー極小期中、30年間に見られた黒点はわずか50個程度にとどまりました。
通常の30年間に観測される太陽黒点が40000~50000個ほどにのぼることを考えると、この時期太陽の活動がいかに低下していたかがよく分かります。
この頃のヨーロッパや北米をはじめとする温帯地域では、冬の寒さは非常に厳しいものとなり、また夏至であっても夏らしさがない年が続いたようです。
小氷河期によって生じる影響

ジャルコヴァ教授は小氷河期の到来についてあくまで断言はできないとしていますが、もし本当に地球にミニ氷河期が訪れた場合、約400年前の寒冷期(日本は江戸時代、全国的な異常気象により寛永の大飢饉が起こった頃)と似た状況になると予測されています。
当時の寒さが想像しやすい話として、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』に収録されている「雪女」があります。
これは江戸時代の武蔵国、現在の東京都青梅市のあたりの伝承で、物語内での時期は3月下旬ごろとされています。
初めにさらっと書かれた「武蔵の国の」をうっかり読み飛ばしたら雪国の伝説だと思ってしまいそうな、読んでいるだけで寒くなってきそうな風景描写です。
食糧危機
江戸時代は現代と比べると総じて気温が低く、先ほど軽く触れたように蝗害(※こうがい…一部のバッタ類の大量発生によって引き起こされる災害)などの異常気象、冷夏によって何度も飢饉が起こった時代です。
現代は、400年前に比べれば食物の種類や生産量も増え、保存技術なども発達していますが、世界的な厳冬や冷夏が続けばすでに懸念されている食糧危機の問題は一気に現実感を帯びてくることでしょう。
特に日本の食料自給率は37%(2018年度 カロリーベースによる試算)と主要先進国の中でも最低の水準で、小氷期によって世界的な不作・不漁が起こった場合、特に大きなダメージを受けることが予想されます。
野生動物による病気媒介・事故
17世紀のペストの流行は、寒さによって餌の足りなくなったネズミが人里に出てきたことが感染拡大の一因となったといわれています。
この時代にペストが深刻な被害をもたらすというのは少し考えにくいようにも思えますが、思わぬ病気の(再)発生・流行や、餌の足りなくなった猪や鹿、熊などの野生動物が街へ降りてきて人を襲う事故が増える可能性は十分に考えられます。
湖や川、海の凍結
北欧周辺など極地の海が凍ることにより貿易等に影響が出る可能性や、水力発電が滞りエネルギーが不足することが考えられます。
日本国内でのエネルギー・発電の供給量に占める水力発電の割合は8%程度です。
すぐカバーできそうな印象の数字ですが、東日本大震災以降、それまで原子力発電が担っていた分のエネルギー(割合にして20%程度)を火力発電がカバーしており、ガスや石炭などの資源の残量を考えるとできるだけ太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーに頼りたいところです。
このことから、「温暖化対策より小氷河期に備えて省エネ社会の構築を急ぐべきだ」とする専門家の声もあります。
また、湖や河川が凍結した場合は水を確保するために一度溶かす必要がありますが、それにもエネルギーが必要となるため、エネルギーが不足すればそれに伴って水も不足する可能性があります。
日本は幸い水資源に恵まれているため水不足に悩むことは考えにくいですが、そうでない国の場合は非常に深刻な問題となるでしょう。
まとめ
「涼しい時期が好き!」くらいの軽い気持ちで選んだテーマが思いのほかシリアスな内容になってしまいました。
今年はコロナ禍に加え、アフリカからアジアにかけて蝗害が発生し、日本国内ではなかなか梅雨が明けないまま観測史上初めての台風の来ない7月を過ごすなど、去年までの凄まじい暑さとはまた違った異常気象に悩まされています。
もし本当に小氷河期が来れば、今回紹介したような問題により世界全体にとって苦しい時期が間を置かずにやってくることになるかもしれません。
しかし、ジャルコヴァ教授は「小氷河期が必ずしも到来するとは限らない」としており、また「むしろ温暖化の心配をすべきだ」とする専門家もいます。
今はこの緊急事態の1日も早い収束を願うとともに、それぞれができることを少しずつ実践したり、あるいは必要に応じて何もせず、自分の心身の健康を大切にしていきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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