あなたは、洋服を買うとき、どのような基準で選びますか?
デザイン、素材、トレンド、それとも価格でしょうか。
最近では、低価格でおしゃれなデザインの物も手に入るようになりましたね。
そんな中、注目されているのが「エシカルファッション」です。
エシカルファッションとは、どんなファッションかご存じでしょうか?
聞いたことないわ……
エコなファッションのことかしら?
エシカルファッションとは、素材の選定、生産、販売までのプロセスで、人と地球環境に配慮して作られたファッションを指します。
環境問題が高まる中で、ファッション業界も大きな転換期を迎えています。
- エシカルファッションとは、どのようなファッションなのか?
- エシカルファッションの発展のきっかけとなった社会問題とは?
- 私たちにできる環境問題への取り組み
洋服は、毎日身につける身近なものですね。
環境問題を考える生活の第一歩として、エシカルファッションについて知ることから始めてみませんか。
ぜひ、最後までお読みください。
エシカルファッションとファストファッションの違い
まずは、「エシカル」という言葉に注目してみましょう。
「エシカル」とは、環境や人に配慮した行動のことです。
したがって「エシカルファッション」は、環境や人に配慮したファッションといえます。
では、その対極にあるのは、どのようなファッションでしょうか?
それは、ファストファッションです。
大手ハンバーガーチェーンなどのお店で、手軽に食べる食事を「ファストフード」といいますね。
「ファスト」とは「早く、安く、手軽な」を意味します。
これをファッションに置き換えると、流行の最先端をいち早く取り入れた、安価で程よい品質のファッションとなります。
ファストファッションの出現で、私たちは安くて程よい品質の洋服を大量に手に入れられるようになりました。
その反面、アパレル業界ではさまざまな社会問題が起こっています。
アパレル業界の問題点
アパレル業界で起こっているさまざまな問題とは、どのようなものでしょうか。
大きく分けて、大量生産や大量廃棄による環境汚染の問題と、労働者に対する問題の2点です。
大量生産、大量廃棄
今までファッション業界には、春夏秋冬の4つのシーズンしかありませんでした。
しかしファストファッションの出現で、52ものシーズンが存在するようになりました。
52のシーズンというのは、毎週シーズンが変わることを意味します。
ファストファッションの普及により、めまぐるしい速さで洋服が製造されていきます。
その洋服は、すべて売れていくのでしょうか?
さすがに毎週、洋服を買うことはないですね。
そういえば、新しい洋服が売れ残って、捨てられてしまう様子をニュースで見たことがあるわ。
その通りです。
残念なことに新しい洋服の半分以上は、売れ残り、廃棄されてしまいます。
そのことがさまざまな社会問題を引き起こしていますが、今回は主な3つの問題についてお伝えします。
- 水汚染
- 大気汚染
- 大量廃棄
水汚染
コットンなどの洋服1枚を作るのに2,300リットルの水を必要とします。
年間の水の消費量は、約83億㎥(立法メートル)+化学物質による水質汚染と膨大な量です。
また、綿花を栽培するために使用される農薬による生産者の健康被害や、生地の染色で使用される重金属、環境ホルモンによる汚染も問題になっています。
大気汚染
アパレル産業は、世界産業の中で、2番目に多いCO2(二酸化炭素)を排出しています。
原材料の調達から製造段階までに排出するCO2の環境負荷の総量は、1年間で約9万トンにもなります。
画像引用:環境省 SUSTAINABULE FASHION これからのファッションを持続可能に
大量廃棄
日本の家庭からゴミとして出される衣類は、年間47万トンにもなります。
そのうち45.5万トンもの服が、焼却・埋め立てされてしまっているのが現状です。
リサイクルされるのは、わずか5%程度の2.5万トンに過ぎません。
1日あたり1,200トンで、大型トラック120台分になります。
画像引用:環境省 SUSTAINABULE FASHION これからのファッションを持続可能に
労働者の問題
環境問題のほかに、開発途上国の労働者の雇用、賃金についても問題があります。
そのきっかけとなった出来事についても解説しましょう。
低賃金、長時間労働
これまで衣料品は、低コストで販売するために、労働賃金を安く抑えられる中国やベトナム、バングラデシュなどで生産されてきました。
これが、ファストファッションの出現により、いっそう加速していくことになります。
生産地の生活水準が上がると、さらに低賃金を維持できる国へと移転を繰り返していったのです。
そのため開発途上国の人々は、「早く、安く、手軽な」洋服を大量に作るために低賃金で、長時間の労働を強いられることになりました。
ラナ・プラザの崩落事故の悲劇
そんな中、バングラデシュのラナ・プラザで悲惨な事故が発生してしまいます。
最近は洋服が安く買える世の中になったと喜んでいましたが、遠くの国では、さまざまな問題が起こっていたのですね。
この事故をきっかけに、「アパレル企業は、生産現場の責任を持つべき」という原則が、世界中に広まることになりました。
これが、現在のフェアトレードという考え方の原点となります。
フェアトレードについては、この後、詳しく解説します。
エシカルファッションの始まり
一方ヨーロッパでは、すでに「人と環境」に配慮したビジネスを確立させようとする動きが、始まっていました。
2004年には、フランスでエシカルファッションショーが開催されました。
これがエシカルファッションの起源とされています。
ファッションショーに参加するには、次のような条件があります。
- オーガニック素材を使っている。
- 自然素材を使っている。
- リサイクル素材を使っている。
- 伝統技術の継承をしている。
- 社会的計画の推進を行っている。
- フェアトレードを推進している。
このイベントは、環境や社会に責任を持つデザイナーやブランドを紹介し、エシカルファッションの意義や魅力を広めることを目的として開催されました。
エシカルファッション10の定義
エシカルファッションには、具体的にどのような基準があるのでしょうか。
イギリスのエシカルファッション推進NPO「Ethical Fashion Forum」が示している基準をご紹介します。
- ファストファッションではない。
- 生産者の権利を尊重する。
- 持続可能な生活を支える。
- 有毒な農薬・化学薬品の問題に取り組んでいる。
- 環境にやさしい素材の使用や開発に取り組んでいる。
- 水の使用を最小限にする。
- 再生可能エネルギーが使われている。
- ファッションの持続性を開発・促進している。
- エシカルファッションに関する取り組みを報告する。
- 動物の権利を守っている。
それぞれの内容を詳しく解説していきます。
ファストファッションではない
安く買うことができても、耐久性がなく、季節に合わせて使い捨てられるようなファッションはやめようと提唱しています。
品質が良く、長く身に付けられて、無駄のないファッションを取り入れていきましょう。
生産者の権利を尊重する
公平な価格で継続的に取引を行い、生産者や労働者を支援しようとする仕組みを「フェアトレード」と言います。
実際、開発途上国における衣服の生産工場の誘致は、多くの雇用を生みだしてきました。
しかし先進国が、作られた原料や商品を安く買い取っているという現状がありました。
そのようなひずみを失くし、誰もが安心して働き、適正な対価を受け取れる社会をめざします。
フェアトレード商品には、ファッションのほかにさまざまなものがあります。
- コーヒー
- 紅茶
- チョコレート
- バナナ
- フルーツ加工食品
持続可能な生活を支える
服の素材や作り方を通して、消費者に持続可能なライフスタイル(生活)を提案できるブランドは、エシカルファッションブランドです。
「持続可能なライフスタイル」とは、今ある状態を良い状態で次世代につなぐ、未来に配慮した暮らしのことです。
最近よく耳にするサスティナブルな生活も同じ意味です。
有毒な農薬・化学薬品の問題に取り組んでいる
ファッションのなかには、素材を作る段階で有毒な農薬や化学薬品を使っているケースが多くみられます。
人の健康を害さない、地球の環境も破壊しないことがとても重要です。
環境にやさしい素材(エシカルな素材)の使用や開発に取り組んでいる
エシカルな素材とは、環境に配慮された植物系自然素材や、ペットボトルやポリエステルを再利用して作られた素材を指します。
代表的なものは、オーガニックコットンです。
オーガニックとは、農薬や化学肥料に頼らず、土・水・空気といった自然の恵みを活かした加工方法です。
農薬を3年以上使わず、自然な栽培方法で作られた綿花をオーガニックコットンと呼びます。
その他のエシカルな素材7種類を紹介します。
麻(リネン) | 水をほとんど使用せずに成長する天然素材 |
ヘンプ | 水をほとんど使用せずに成長する天然素材 |
靭皮(じんぴ)繊維 | 植物内部にある繊維状の物質 |
テンセル | 木材を原材料とする コットン、ウール、シルクなどと組み合わせも可能 |
バイオ由来の化学繊維 | サトウキビ、トウモロコシから生成した繊維 |
ヴィーガンレザー(アニマルフリー素材) | パイナップルの葉、サボテン、りんご、マッシュルームなど使用 |
ペットボトルのリサイクル繊維 | ペットボトルを再生した原料を使用 |
水の使用を最小限にする
先ほどもお伝えしたように、洋服を作るときには大量な水を必要とします。
しかし、水は限られた資源です。
エシカルファッションは、水の使用量をできるだけ抑えて作られます。
再生可能エネルギーが使われている
どのような業種においても、製造過程ではさまざまなエネルギーを必要とします。
再生可能なエネルギーを使い、長く着られる服をつくるのもエシカルファッションの特徴です。
また、小規模生産で必要なエネルギーのみを使うという企業も増えています。
例えば受注生産を行うのも、廃棄を最小限にするひとつのやり方です。
ファッションの持続性を促進する活動をしている
例として、世界的に有名なブランドGUCCI(グッチ)の活動をご紹介します。
GUCCIは、2015年に10年間にわたる包括的なサスナビリティ戦略「Culture of Purpose」を発表しました。
環境負荷を減らし自然を守る取り組みを、積極的に推進しています。
その中で、地球環境の問題に対して具体的な数値を掲げ、取り組んでいるのです。
輸送、流通、業務での飛行機利用、燃料やエネルギーに関する排出範囲においては、2025年までに50%の削減を目指しています。
グッチが目指すのは、よりよい未来をつくるために大きな影響をもたらすこと。そして事業活動を通して人や自然に積極的な変化を生み出すことです。
前グッチ社長兼CEO マルコ・ビッザーリの言葉より
引用:グッチのサステナビリティ戦略
エシカルファッションに関する取り組みを報告する
生産した洋服が、どこでどのように生産されたのかを具体的に公開します。
服の生産過程を明らかにすることで、消費者はエシカルファッションを選びやすくなります。
動物の権利を守っている
服を作るために動物を殺さないようにしよう、という考え方です。
動物福祉に配慮して、ウール、アンゴラ、レザーといった動物由来の素材を使いません。
すべての命を尊重し、共存していく世界こそが、本当の持続可能な社会の実現につながります。
エシカルファッションブランド5選
日本でも買えるエシカルファッションブランドを紹介します。
「ずっと大切に身に付けたい、使いたい商品」を見つけてくださいね。
People Tree(ピープルツリー)
フェアトレードブランドとして、いち早く労働問題や地球環境に着目した企業です。
「ゴミを出さない、生まない、服づくり」がコンセプト。
生地、ボタン、縫い糸のすべてに天然素材を使用し、手仕事で仕上げた商品を展開しています。
洋服のほかにチョコレートやコーヒーなどのフェアトレード食品も人気があります。
TEN(テン)
「10年着るってかっこいい」をコンセプトにしたエシカルファッションの入門服。
ラナ・プラザの崩落事故から10年を迎えた日に誕生しました。
10年着たくなる着心地、耐久性とデザイン、そして水平リサイクルが特徴です。
「水平リサイクル」とは、着古したTENの服をまたTENの服に活用する仕組みのことです。
素材は、オーガニックコットンと水平リサイクルされたリサイクルコットンを使用しています。
KAPOK KNOT(カポックノット)
カポックとは、インドネシアで採れる「カポックの実」を利用した天然素材です。
カポックの繊維は中が空洞になっているためとても軽く、コットンの1/8の軽さといわれています。
光を吸収・発熱し、暖かい空気を蓄え「たった500gでダウンの暖かさ」を実現しています。
LOVST TOKYO(ラヴィストトーキョー)
青森リンゴから生まれたアップルレザー(aplena)を使用。
本来ならば捨てられてしまうはずだった、りんごジュースのしぼかすの樹脂を合成することで生まれました。
従来のヴィーガンレザーよりもさらに石油由来の原料を抑えており、軽量で水に強いのが特徴。
バッグやリュック、アクセサリーといった商品を展開しています。
All birds(オールバーズ)
時代をリードする、サスティナブルなシューズブランド。
おもな素材はメリノウールで、靴紐にはリサイクルされたペットボトルの素材を使用しています。
圧倒的な履き心地と、くりかえし洗濯機で洗える手軽さや耐久性が魅力です。
エシカルファッションを選ぶことは、自分自身の利益だけではなく、人や環境、社会に貢献することにもつながります。
エシカルファッションで私たちにできること
エシカルファッションを意識することは、とても大切だとわかりました。
では、どのように生活に取り入れたらいいのでしょうか?
まずは、洋服を選ぶときにエシカルな素材を意識することから始めましょう。
エシカルファッションは、ファストファッションに比べて値段が高い傾向にありますが、長く大切に身に付けることでその問題も解消できるでしょう。
欲しいものを買うのではなく、必要なものを吟味して買うという行動がとても重要です。
エシカルファッション今すぐできること7選
環境にやさしい素材の洋服を購入することだけが、エシカルファッションではありません。
高価なものを無理して買わなくても、すぐにできることがあります。
- 今ある洋服を大切に着る。
- 余計なものを買わない。
- 購入するときは厳選し、できるだけエシカルな素材のものを選ぶ。
- フリマなどを活用し、不用なものは必要な人にゆずる。
- 新品にこだわらないものは、リサイクル品を購入する。
- リメイクする。
- レンタルを活用する。
手持ちの洋服を大切に着ることから始めてみます。
めったに着ないものは、レンタルするのもいいですね。
まずはできることから始めることこそが、エシカルファッションへの第一歩となります。
エシカルファッションとは?地球環境を守る新しい選択
ここまで、エシカルファッションとはどのようなものか解説してきました。
- エシカルファッションとは、人や社会、地球環境に配慮したファッションである。
- エシカルファッションの発展の背景には、環境汚染や労働者の問題がある。
- エシカルな自然素材のものを選ぶ、今ある洋服を大切に着るなど、できることから始めてみよう。
あなたが、エシカルファッションを意識することは、小さなことかもしれません。
しかし、ひとりひとりの小さな取り組みが大きなうねりとなって、世界中に広がっていきます。
あなたの心がけが、子孫や世界中の生き物、地球環境を守ることにつながっていくことは、間違いありません。
かけがえのない未来のためにできることから始めてみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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