毎年、人気が高まる一方の中学受験。
地域によっては、なんと学年の90%以上が受験する小学校もあります。
一方、もちろん、親や本人の意思で「しない」と早々に決めているご家庭もあります。
どうするかまだ決めていない場合、親としては
「する?しない?どうしよう…」
と悩みますよね。
中学受験をするかしないかで、子ども自身の生活はもちろん、家族みんなの毎日の生活や金銭面にも大きな影響がありますので、慎重な判断が必要です。
今回は、中学受験を考える時、我が子の資質を見極めながらよりよい方向を選ぶにはどうしたらいいのか、そのヒントをお伝えしたいと思います。
中学受験は、「親子二人三脚で同じものを目指す最後の経験」です。
ゆえに往々にして「中学受験は親の受験」とも言われます。
だからこそ、親が暴走して失敗するケースが後を絶ちません。
運動会の二人三脚でも、一人が勝手に暴走したら、もう一人は必ず転んでしまいますよね。
中学受験の親子関係も同じです。
相手のペースを確認しながら、同じ方向を向いて走ることが何よりも大切なのです。
中学受験で失敗しないためには、まずは「我が子が中学受験をするかしないか」を考える判断基準を理解しておきましょう。
中学受験者数はなぜ増えている?
年々増加傾向にある中学受験者数。
2020年の調査では、首都圏一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)においては、約4万1千名が中学受験をしたと推測されています。
これは前年比約103%で、5年連続で増え続けています。
ではなぜ、中学受験の人気はこんなに高まっているのでしょうか?
3つの理由が考えられます。
理由1:6年間の一貫教育
理由2:学校独自の授業や校風
理由3:大学入学共通テストの影響
ひとつずつ見ていきましょう。
理由1:6年間の一貫教育
中学受験で進学する学校は、ほとんどの場合、中高一貫校です。
つまり高校受験が不要です。
入学後すぐに高校受験の準備に入らねばならない公立中学よりも、小学校のうちに受験を終え、6年間一貫した教育を望む家庭が増えてきているのです。
さらに、中学生時代は、ちょうど思春期にもあたります。
自らの内なるものと闘うこの時代に、受験に振り回されず過ごせる時間は、大きな財産となると言えます。
ちなみに、ベストセラー「君たちはどう生きるか(吉野源三郎:著)」のコペル君は、中学校2年生にあたります。
当時の旧制中学は今の中高一貫校とほぼ同じシステムだったので、コペル君は受験の必要はありませんでした。
だからこそコペルくんは、とことん自らと対峙し、人間として大きな成長をすることができたといえるでしょう。
また、6年間一貫した教育を受けられるということは、部活動も6年間一貫して打ち込める、ということにもなります。
中高生時代において、部活動は生活の大きな比率をしめますし、その後の人生にも大きな影響を与える、と言ってもいいでしょう。
ですから6年間一貫して部活に打ち込めるというのは、大きな魅力です。
もちろん友人とも、6年間を通して密度の濃い関係性を築き上げることができます。
理由2:学校独自の授業や校風
中学受験が必要な学校には、独自の理念があります。
それは勉強方針だけにとどまらず、例えば「のびのびした自由な校風」「校則のない生徒主体の学校」など、様々な分野に及びます。
一般の公立中学は、おしなべて平均化されているケースがほとんどです。
なぜなら公共教育機関である以上、学校によって差があるのは好ましくないからです。
(一部の公立の中高一貫校は除きます)
教育内容も、決められた教科書を使い、決められたカリキュラムをこなさなければならないため、自由度がありません。
ですから、親としても、
- うちの子は理科が得意だから、その長所を伸ばしたい!
- 早い時期に留学を経験させたい!
- 算数が大好きなので、早くから理系に特化した授業を受けさせたい!
- うちの子はのんびりタイプなので、自由な校風でのびのび過ごさせたい!
このような思いがあれば、それを叶えられる学校を選択したい、と思うのは当然のことなのです。
また近年は、各学校ともに様々なパターンの受験方法を用意しています。
- 算数・国語一教科入試
- 医療系特化入試
- 英語入試
- スピーチ入試
- ものづくり入試
入試は、単に学力を見るだけではなく、その学校に欲しい子を集めるためのものです。
我が子にぴったりな受験方法があったら、その学校と我が子は相性がいい、といえるでしょう。
理由3:大学入学共通テストの影響
最近では、大学入学共通テストの改革が混乱続きだったことも、大きな理由になっています。
2020年の高校3年生は特に、変更の連続に振り回されました。
この先どうなるか先行き不透明な大学入試を回避するために、中学受験で大学付属校を選択し、そのままストレートで大学まで進学する道を選択する家庭が増えているのです。
大学受験回避のために中学受験をする、というのは本末転倒のような気はしますが、実際、ここ数年は、大学付属校の人気が特に高まっています。
中学受験が「いいか悪いか」はナンセンス
よく「中学受験をする方がいいか?悪いか?」という議論があります。
でもこれはまったく意味のない議論です。
いい、悪い、と言いますが、いいってなんですか?悪いってなんですか?
中学受験でいい学校に入っていい大学に進学して、大企業に就職することが、我が子にとって「いいこと」でしょうか?
本気でそう思うなら、あなたの望む大企業にたくさん就職している大学を調べて、そこに進学できる最短コースを調べて下さい。
ただしそれは、親の思う「いいこと」であって、子どもの望む「いいこと」ではないかもしれませんから、そこは子どもとちゃんと話し合ってください。
子どもがまったくそう思っていないのに、親がそれを「いいこと」だと思って勝手に推し進めたら、間違いなく「悪いこと」になります。
中学受験するかしないかを決める方法は「いいか、悪いか」ではありません。
その方法ただひとつ。
目の前の我が子をしっかりと見つめて判断することです。
中学受験する?しない?親の出来る判断方法
では、親が我が子を見つめて正しく判断するにはどうしたらいいのでしょうか。
中学受験をするかしないかの選択は、小学校3年生くらいまでに決めることが求められます。
なぜなら中学受験塾の本格的なスタートが、小学校3年生の2月、つまり4年生になる前に始まるからです。
しかし、まだ幼い小学生に、自分が中学受験するかしないかを決めさせるのは難しい問題です。
自分から「やりたい!」という子どもはごく少数ですし、そもそも、中学受験がなんなのか、理解している子の方が少ないでしょう。
ですからここは、親が子どもの資質と様子を見極めて判断をしなければなりません。
大切な3つのポイントをお伝えいたします。
判断方法1:子どもは学ぶことを楽しめているか
判断方法2:子どもに心から叶えたい夢があるか
判断方法3:地域の環境と友人関係
判断方法1:子どもは学ぶことを楽しめているか?
ここで大切なことは「勉強」ではなく「学ぶこと」を楽しめているか、ということです。
学ぶことは、学校の勉強に限りません。
昆虫採集やゲームだってある種の「学び」です。
大好きな昆虫を探して、その昆虫について調べることは立派な学びです。(カマキリ先生の香川照之さんがとてもいい例ですね)
新しいゲームの攻略方法を自分で一生懸命調べることも、立派な学びです。
最近は自分でYouTubeを作成し、公開する小学生もいますよね。
アプリを開発して発売している小学生もいます。
これらも素晴らしい学びだと思いませんか?
私たち大人が想像する以上に、今の子どもたちは軽やかに学びを楽しんでいます。
このような「自ら新しいものを知る」ことに喜びを感じる子どもなら、小学校では教えてくれない中学受験塾の学びにも、好奇心いっぱいに取り組むことが出来るでしょう。
判断方法2:子どもに心から叶えたい夢があるか?
かつて、子どものなりたい職業といえば、スポーツ選手、お花屋さんなどが上位の常連でしたが、昨今は、医者、学者、薬剤師、などの職業が上位にランクインしています。
子どもが本当に医者や学者になりたいと思うのなら、そしてあなたがそれを応援するのなら、早くから準備をすることは親にとって当然のことですよね。
また、スポーツ選手だとしても、本気で取り組むのなら、私立の強豪校を狙うという選択もあります。
子どもの夢なんてばかばかしい・・・。
もしあなたが少しでもそんなことを思うのなら、中学受験なんて考える前に、まずは子どもときちんと向き合うことから始めてください。
私の友人のお子さんの夢は、小学校からずっとパイロットになることでした。
そして今年その夢を叶えました。
友人は彼の夢を尊重し、家族旅行はいつも彼の憧れの飛行機会社を選び、中学受験を選択し、勉強を重ね、そしてついに憧れの会社でパイロットとして採用されたのです。
「パイロットなんてなれるわけないでしょ」
と友人が一笑に付していたら、彼の夢は絶対に叶うことがなかったでしょう。
子どもの夢に真摯に寄り添うこと。それも親の大事な役割です。
判断方法3:地域の環境と友人関係
冒頭にもお伝えしましたが、中学受験者数はものすごく地域差があります。
同じ東京都でも、地域によってその人数は大きく変わります。
中学受験者が多いと、その地域の公立中学にどのような影響を及ぼすかご存知でしょうか。
実は廃校の危機になるほど、進学者が減ってしまう中学校があるのです。
私の息子が中学進学時、近隣の公立中学校では、新入生は約20名でした。
クラスではありませんよ。1学年全体で…です。
もちろん全学年1クラスずつの単学級です。
そうなるとどういう弊害があるでしょうか。
まず、大人数で取り組む部活動が成り立ちません。
サッカーや野球はまず無理です。絶対人数が足りませんから。
吹奏楽部も人数の問題で休部状態でした。
先ほども書きましたが、思春期の子どもにとって、部活動は大きな意味があります。
部活動そのものもですが、何よりもそこで共に切磋琢磨する仲間たちは一生の友となるでしょう。
それなのに、入学した時点ですでに入れる部活動が限られているのは、子どもにとってとても残念なことです。
また、人数の少ない単学級ですと、何かあった時、逃げ場がありません。
濃すぎる人間関係は、時にいじめという問題を引き起こします。
特にこの時期、女子の方が精神的に大人なため、逆に陰湿ないじめに発展することがあります。
ですから、
女子が公立中学を避ける
↓
ますます人数が減る
↓
さらに公立中学を避ける女子が増える
という負のスパイラルが生まれる可能性があるのです。
もちろん、そんな可能性ばかりではありません。
地域に密着した友人と長く濃い関係を築くことは素晴らしいことです。
そこから中高一貫校と同じように、一生の友が生まれることも、もちろんあるでしょう。
ですから、親としては地域の学校の様子を見極め、我が子に合っているのかどうかを考えることが大切になるのです。
中学受験をやめた方がいいケースとは?
最後に、絶対に中学受験をやめた方がいい例をご紹介します。
それは、親がほんのわずかでも我が子に対して
「中学受験の勉強をするのはかわいそうだ」
と思っている家庭です。
親がそう思う背景には「子どもが勉強することは辛いことだ」という思い込みがあります。
小学生くらいだと、クラスの人気者はスポーツが得意で明るい子、というイメージがありますよね。
サッカーや野球、ダンスなどに打ち込んでいる子は、周りからは決して「かわいそうな子」とは言われません。
むしろ「自分の目標のために努力を重ねて素晴らしい!」と称賛されます。
しかし、なぜか勉強を頑張っている子は、冷ややかな目で見られます。
「勉強させられてかわいそう」
「自由に遊べなくてかわいそう」
そんな風に言われてしまいます。
勉強を頑張っている子も、スポーツを頑張っている子も、目標に向かって頑張っているのは同じなのに。
親までもが子どもに対して「かわいそう」という意識があるのなら、間違いなく子ども自身も
「受験勉強する自分はかわいそうな子だ」
と思ってしまいます。
そんな自己肯定感が低い状態で受験勉強を始めても、いい結果がでるわけがありません。
あなたに1ミリでもそういう気持ちがあるのなら、今すぐ中学受験を考えるのはやめましょう。
中学受験をするかしないかは、あなたの子どもが教えてくれる
今回は、中学受験を考えた時、親として何を基準に判断したらいいか、についてお伝えしました。
- 中学受験者数が増えている背景とは
- 中学受験を「いいか悪いか」で考えてはいけない。目の前の我が子をしっかりと見つめて判断する
- 判断方法1:子どもが「学ぶこと」を楽しめているか考える
- 判断方法2:子どもに本当に叶えたい夢があるか?あるならとことん応援する
- 判断方法3:地域の環境と子どもの友人関係を考えて判断する
- 親が「受験勉強するのはかわいそう」と思うなら絶対に受験をしないこと
子どもの幸せを願わない親はいませんよね。
私は、親の務めは「子どもが望む未来へ導く手伝いをすること」だと思っています。
そのためには、自分の価値観を押し付けるのではなく、子どもの声にいつも真摯に耳を澄ますことが何よりも大切ではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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